警視庁捜査一課に所属する青山はとある事件で“割り屋”と呼ばれ有罪率100%を維持し続ける検事の稲城と知り合う。一方同じく捜査一課の秋月は、捜査中に失踪した刑事について匿名の通報があったことを理由にその行方を探す命を受ける。失踪した刑事は秋月の婚約者であった。秋月は武蔵野東署の榎木という刑事に連れられ監察医として特別な扱いを受ける美貌の医師・夏目塔子と出会い、青山は稲城の特命を受け事件性がないと判断された案件の関係者が相次いで失踪している武蔵野東署へ向かった。
青山と秋月それぞれの視点で語られる始まりの2章は全く繋がりがなく、探偵役と思しき男の存在も青山のほうにだけあるもんでどういう構成・趣向の作品なのだろうか?と思いながら読み進めたのですが、3章になると2人の刑事が行動を共にすることになり、ようやっと「断罪」というタイトルの意味であり作品の方向性が見えてくるんだけどそこまでが長かった。
でも社会秩序を安定させるため迅速に犯人を逮捕し起訴して有罪にもちこみ事件解決に導くことで犯罪への抑止力とすることを目的とし、そのなかには犯人がわからなかったり有罪にできるための証拠がなかったりする場合も含まれていて、そうなったときは“生贄”を用意してでも「有罪」とするという警察や司法関係者によって組織される「藁束の会」と、その下部組織であり藁束の会が取りこぼした法律で裁くことができない悪人や社会構成に不要とされる人間を掃討、つまり死という処罰を与えることを目的とする「ユーゼニクス」という裏組織(笑)の存在が明らかになったところからは一気読みでした。
で、普通というかよくあるヤツだとそれぞれ目指すべきものは同じであっても取るべき手段が違う二つの組織に対し、青山と秋月が法を曲げ犯した時点でそれは正義じゃない的な主張でもってそれを暴いたり壊したりするんだけど、この作品は「え?この人がこの人を殺しちゃうの?」という結構なアクロバット展開になるもんでびっくりした。実験視点もわりと盲点の人物のものだったし、警察小説だと思ってたらサイコだった!という驚き。
確か以前読んだ「キリングクラブ」もそうだったし、なんでもかんでもサイコになっちゃう作家さんだとしたらわたし結構嫌いじゃないですw。