佐々木 譲『制服捜査』

制服捜査

制服捜査

長く強行犯係として警察人生を送っていた川久保巡査部長は、2年前に北海道警の警部が起こした不祥事をめぐる玉突き人事のあおりで犯罪発生率管内最低地区の駐在所への赴任を命じられた。娘二人の学業を優先し、駐在としては異例の単身赴任。赴任先は一見平和で健全な田舎町だが、犯罪発生率の低さは犯罪行為があっても内々で処理してしまう故の結果であり、それは13年の年月を経た連続誘拐事件の温床であった。


捜査の効率が下がるのを承知の上で、癒着等の不祥事を恐れ無能な人事異動を行う道警という背景のもと、畑違いの世界、それも北海道のド田舎の駐在所に赴任することになってしまった元刑事が主人公。何らかの不祥事を起こしたわけでもない刑事が駐在を命じられるなんてことがあるのだろうか?と思うわけですが、それを淡々と受け止めててちょっと違和感。もっと自棄になってもいいと思うんだけど、捜査の権利を持たない一駐在さんとして、町で起こる些細な出来事や小さな事件をよそ者扱いされながらも一生懸命地域のことを学び、調べ、そして自分なりに事件を解決していく連作短編集の形。1話目を読むと結構はみだし系の駐在さんかと思いきや、熱血なんだけど自分の立場というか駐在警官の枠はキッチリ守れる冷静さもあり、長年刑事をやってただけあって判断力や推理力も備えてるよく出来た人でした。
警察小説ではあるけれど、実質一人で地道に町を歩いて情報を収集し、自分が納得できる結果にたどり着ければそれで満足なところがあって、逮捕できない自分の立場に不満を感じることもなく、最後にチクリと一刺しして余韻を残すパターンなので、なんだか警察小説を読んだ感じがしない。ちょっと不思議な読後感。もっと住民みんなが顔見知りという田舎ならではの人間模様みたいなのがあれば読み物として更に盛り上がったかなーと思ったのですが、よそ者から見た町、しかも見る人はおまわりさんなのだからまぁこれでいいのかもしれない。
東直己の小説でイヤというほど 北海道警=腐りきってる組織 という描写を読まされているのですがこれもまたそうでして、道警はリアルにダメ組織なのか?と素朴な疑問。