笹本 稜平『不正侵入』

不正侵入

不正侵入

三十年マル暴一筋で生きてきた刑事・秋川は、大手企業に勤める大学時代の旧友の不審死をきっかけに、検察と総会屋、そして暴力団が結託する謀略の尻尾を掴む。突然の配置転換、友人の妻の失踪、不可解な行動をとり操作を混乱させる謎の青年、冤罪の可能性がある過去の殺人事件に、見え隠れする検察の影。度重なる操作妨害を乗り越え、秋川は真実にたどり着くことができるのか。


三十年間マル暴一筋のわりには全くその種の匂いがしない刑事が主人公。ちょっと藪をつついてしまったせいで、全く畑違いの新設部署ハイテク組織犯罪特別捜査室[通称:ハイ特捜査室]に追いやられてもこれまで配置転換を何度も断わってきたってのに、今回は全く抵抗するでもなく諾々と従ってるし、ヤクザに顔が利き、捜査にIT知識も必要というのが必須条件なので仕方がないとはいえ、もうちょっとそれらしい設定はなかったもんかな。事件の背後にいるのはきっとそのあたりの人だろうなぁというのは簡単に想像がついてしまうのですが、秋川の身近に情報を漏らしている裏切り者がいることが分かり、そいつは誰だ?という枝は二転三転して面白かった。
スペクタクルアクションが得意(だと私は思っています)の作家さんがハイテク犯罪という身体を動かさない世界に挑戦したことは評価しますが、なんだかマニュアルを見ながら書いたようなぎこちなさで、なんというか作家も大変だよなと思います。