我孫子 武丸『修羅の家』

修羅の家

修羅の家

  • 作者:我孫子 武丸
  • 発売日: 2020/04/15
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

女をレイプした結果殺してしまったところを目撃され、「家に来い」と誘われついていった男と、非常勤で務める区役所で初恋の女子を見かけ声を掛けた男の視点で描かれる、「悪魔」が支配する「家族」の物語です。

この視点に仕掛けがあることは予想がつくんですが、そこを捻ってくるのかと思ったら真正面から「そのまんま」であったことが驚きであった。キャラがあまりにも違いすぎて「無理やろ(笑)」と思いつつ、ていうかさすがにアウトだろと思ったレイプ殺人の“種明かし”が「マジかよ(笑)」という感じ。

と、「(笑)」と書きはしましたがおそらく“北九州連続殺人事件”を下敷きにして描かれたものだろうと、少なくとも私はそれを想起させられたわけで、その現実のほうがはるかに凄惨だもんで実際にはなんとも言えない気持ちでページをめくり続けました。
もう、どんな小説であってもあの事件(現実)を超えることはないし、そういう意味で「殺戮にいたる病」の衝撃を超えることはもうないんだよ。