我孫子 武丸『裁く眼』

裁く眼

裁く眼

連続殺人の容疑で罪に問われている美貌の女の裁判を急遽法廷画家として傍聴することになった漫画家志望の男。女の美貌に魅入られながらも男は裁判の画を描きそれがテレビで流れるが、その直後何者かに後頭部を殴られる。さらに隣の席にいた同業者も不審死を遂げ・・・ってな始まりで、法廷ミステリは数あれど「法廷画家」がその主人公になるってのは目新しい(のではないか?)なと楽しみに読み始めましたが、想像していたものとはちょっと、いやだいぶ違った。
美人の容疑者に“特別”な感情を抱く主人公が、自身は襲われ知り合った人も死んでしまうといった局面にぶつかりながらも独自の視点で真相に辿りつく的な、そんな感じのものを想像していたのですが、主人公が命を狙われたことや同業者の死という要素がなんていうか・・・棚上げ?された状態で話がサクサク進むもんで主題がどこにあるのかわからず戸惑ってるうちにあっという間に解決しちゃった!ってな感じで、もっとハードなものを想定していた私は完全に肩すかし状態でした。
主人公が真実を見抜く眼を持ってるのかと思いきや、(今回は)色覚異常という現実的な理由だったってのはドンデン返し的な意味で面白いのに、そこまでのノリのまま流されちゃったのは残念・・・かな。
でも最後まで面白く読めたのは実質W主人公だった「鉄兄」と「蘭花」の関係性が良かったからだと思う。好奇心旺盛な中二女子などという存在をウザいと思わせることなくここまで上手く動かせるかー!とここは素直に感嘆。