下村 敦史『コープス・ハント』

コープス・ハント

コープス・ハント

八人の既婚女性を殺し、美貌の連続殺人犯として注目される浅沼聖悟は、死刑判決を受けた法廷で罪を問われている殺人のうちの1件は自分の犯行ではないと宣言する。犯人たちを知っていて、うち一人は既に殺して「思い出の場所」に埋めたという浅沼の発言に世の中は騒然となる。そしてユーチューバーとして活動している少年たちは「遺体探し」の旅をすることに。

物語は浅沼が「やっていない」と言う1件の殺人事件を担当していた女刑事の視点と、親や学校での関係性に悩みネットの世界に居場所を求め、ユーチューバー仲間から誘われて「遺体探し」をすることになった男子中学生の視点を並行して描く構成で、ここに仕掛けがある(であろう)ことは解る人には即座に解る。なんなら登場人物が出揃った時点で解る。私も解った。となればあとは両者の繋がりにどんな肉付けがなされるのかということになるわけですが、読み終わっても冒頭の女刑事が魅入られた「美貌の連続殺人鬼」とその素顔が一致することはありませんでした。

というか、「美貌の連続殺人鬼」などというイメージ膨らませまくりの釣り要素(読み終わってみればまさしく釣り要素でしかなかったです。だからママはパパと結婚したしパパはママと結婚したんだねと思ったぐらいなので両親の容姿は並以下と判断していいと思うのですが、教育方針に容姿に対するコンプレックスがあるにせよ、子供の容姿が整っていることについては特になにもない(それが理由というわけではない)ので)が最終的にはどこかへ行ってしまいゲームやラノベの影響がどうのこうの、誰にでも浅沼聖悟になる可能性はある(誰しも闇に囚われてしまうかもしれない)などというありがち且つつまらないところに着地したのにはガッカリです。美貌の連続殺人鬼に釣られた私が悪いんだけど。

ていうか、一番恐ろしいのって殺人を目撃したどころか思いっきり関わっていながら怖かったからという理由でそれを隠し続ける“普通の人間”ですよね・・・。罪悪感を抱え続けて生きているのは結構だけど、判決のニュースを見て取った行動が「ネットに書き込み」って、ここがなんとも言えず「現代」っぽい。