貫井 徳郎『ミハスの落日』

ミハスの落日

ミハスの落日

全く面識のない大手製薬会社の創設者から突然呼び出されたジュアンは、母親の残した言葉と好奇心から相手が住むミハスの街を尋ね、30年の時を越えた密室殺人の真相を知る「ミハスの落日」
勤めるビデオショップの美しい常連に恋した冴えない男。ある決意を胸に秘め、彼女の部屋に侵入すると、彼女は既に死んでいた。刑事のロルフは父親と別れた妻への複雑な思いを抱えたまま、事件を捜査する「ストックホルムの埋み火」
一見単なる転落事故に見えたが、妻が夫の保険金を受け取るのはこれで3度目だという。妻に岡惚れした刑事に半分脅された保険調査員の“おれ”は、独自に調査を行う羽目になる「サンフランシスコの深い闇」
3ヶ月前から始まった娼婦連続殺人事件。“夜明けの殺人鬼”と呼ばれる犯人はなぜ娼婦ばかりを狙うのか。そんな時、一人の娼婦の亭主が殺される事件が起きる「ジャカルタの黎明」
さほど珍しくない女性の一人旅だが、彼女はどこか雰囲気が異質だった。専属のツアーガイドを指名した彼女の目的は、失踪した夫を探すことだった「カイロの残照」


あとがきで著者もそう書いてますが、ちょっと毛色の変わった旅行記という感じ。どの短編も特別舞台が外国である必要はないし(サンフランシスコの深い闇だけその要素が必要かもしれませんが)、貫井さんにしちゃ謎もトリックも読後の驚きも小粒です。かなり風景描写に力が入っているので、てっきりスペイン旅行を経費で落すためにタイトル作を書き、他の作品は後付というか、外国を舞台にした括りで作品集を出せばいいだろうみたいな裏事情があるんだと勘ぐったのですが、全部の国を旅した(作品のためでなく旅行が先)とのことで、そうでしたか勘ぐってごめんなさい貫井さん、そんな顔してなかなかアクティブなんですね・・・と失礼なことを思いました。