水原 秀策『裁くのは僕たちだ』

裁くのは僕たちだ (ミステリ・フロンティア)

裁くのは僕たちだ (ミステリ・フロンティア)

美人代議士が被告ということで世間が注目する裁判の裁判員に選ばれた男が有罪か無罪かを巡って様々なトラブルに巻き込まれる羽目になるというそれなんてドラマ・魔女裁判?という物語でした。とは言え、ドラマのように借金を背負わせるだの子供を誘拐するだの犯罪まがいの卑劣な手を使って脅しをかけるなどというものではないし、裁判員の男も仕事上の立場を利用し金を横領するだの過去を隠して結婚しようとするだのホモだの(笑)付けこまれる理由があるわけでもないまぁ普通の男で、材料はいたってシンプルに「金」のみ。だからこそこういったことが実際にありえるのではないか・・・?という気持ちにはなりました。でもかなり軽いタッチで書かれているので重厚な法廷(裁判員)小説を求めて読むことはオススメしません。ってこの装丁みたらそういうんじゃないなとわかるとは思いますが。
代議士が被告なので有罪か無罪かに政治絡みの思惑があるのかと思いきや、男に接触する人物たちの真の動機になかなか凄いドラマがあって、そこはちょっと驚きました。
あと、検察と裁判官がズルズルのツーカーで、無罪判決を出すとお互いの評価に関わるから裁判官三人の票は最初から「有罪」と決まってるってのにはそんなもんだろうと分かっていながらもやっぱりこの裁判員制度というものに対してなぜこんな制度が必要なのか?と納得・・・というか理解しかねる。誰のための制度なのかと。