月村 了衛『悪の五輪』

悪の五輪

悪の五輪


1963年。戦争の影は姿を消しアジアで初のオリンピック開催を翌年に控える日本が舞台で、元戦争孤児で映画好きのヤクザがオリンピック映画を撮る監督の座を巡り邁進する物語です。

いつの時代でもオリンピックという巨大利権の背後には様々な立場の組織・人間たちのどす黒い思惑があるわけで、そこを「記録映画」「映画監督」という切り口から描くところがいかにも、そしてさすが月村さんといったところですが、「東京輪舞」と同じく実在する人物や歴史をあちらこちらに配置しつつエンターテイメント性の高い物語を作り上げる手腕はただただ見事。

そしていつものことながらカッコいい男が出てくる出てくる!。花形、篠村というカッコよすぎる二人の「兄貴」に物語を彩らせつつ、主人公の話としては「負け戦」として終わるところが痺れるわー!。これ、背後からブスリ的な終わらせ方をしたくなると思うんですよね。そこを若松孝二という実在した監督を噛ませつつ、主人公の空しさだけが残る・・・というこの終わり方が最高に色っぽい。