月村 了衛『コルトM1847羽衣』

コルトM1847を背にある日突然行方知れずとなった想い人を探す女渡世人・羽衣お炎という月村さんにしか描けないだろう!という女主人公が佐渡を舞台に大立ち回り、男と男の戦い(弟分による兄貴の敵討ち)あり、頭と仲間たちの絆あり、男と女の愛憎あり、そしてなんといっても羽衣お炎とその一番弟子であるおみんの姉妹愛でいいのかな?お炎を姉御と慕うおみんちゃんの一途さと、あらゆる要素がてんこ盛りのアクション時代小説です。
幕末なので短筒そのものはそこまで珍しいものではないのでしょうが、6連射できるリボルバーを操る女などという存在はあり得ませんよね。武士も裏稼業の人間も、男達はみな刀や匕首といった刃物を手にしているのに主人公、それも女だけはコルトをぶっ放すだなんて、誤解を恐れず言うとラノベか!?ってな設定ですが、このあり得ない女主人公をいともあっさり物語世界に馴染ませてしまえるのが月村さんの技、なんだよねぇ。女主人公こそ突飛な存在であるもののそれ以外は設定であり展開であり、とても堅実。
というわけで、羽衣の姐さんことお炎さんからすると『敵』のあたるのは島津藩島津斉彬です。この時代ですから、斉彬の側からすれば斉彬にも理由があって思惑があって、正義があるのでしょうが、この物語では完全に悪です。
折しも今現在放送中の大河ドラマの舞台は薩摩であり、ちょうど私がこの本を読み始める直前に斉興から斉彬に藩主が変わる「お由羅騒動」を描いてて、この作品のなかでもそのことが書かれているし、さらに藩主交代をロシアンルーレットで決めるというトンデモ演出があり私は呆れてしまったのですがお炎さんの愛機がリボルバーなんだから斉彬がロシアンルーレットやってもおかしくはないか・・・と思えたりして、相乗効果じゃないけどドラマ視聴と読書という異なる行為が結びつく面白さを味わえました。