- 作者: 赤松利市
- 出版社/メーカー: 徳間書店
- 発売日: 2018/07/21
- メディア: 単行本
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帯に書かれた「第一回大藪春彦新人賞受賞者、捨身の初長編」だけでも私の目を惹いたでしょうが、それよりなにより『海の雑賀衆』ってこのワード!これがもう私の琴線をビンビン弾きまくり!!。
というわけで、日本海に浮かぶ孤島を基地とする一本釣り船団・・・はかつての栄光で今はオンボロ漁船1隻に5人の漁師しかいない“海の雑賀衆”の物語です。
数日に一度漁をしてまとまった金を得たら居酒屋で呑んでサウナで汗を流して食料品や酒を仕入れてまた島に戻って釣りをするという日々を送っていた漁師たちに取引先の女将を経由して「儲け話」が持ち込まれたことで、漁師たちの環境・関係性は一変し、やがて越えてはならない一線を越えてしまう。という話なんだけど、そんなに“面白い”という感じではないわけですよ。全体の三分の二ぐらいまでは「へしこ」用の鯖を釣る算段をしてるだけの話なので。でもそこには濃密で濃厚な人間関係があって、主人公が抱える感情があって、なんだかわからない吸引力があるんです。
そんな「漁師の話」が三分の一を残すあたりで姿を変える。文字通り血腥い犯罪物語になるのです。そしてその背後にあるもの。すべては「そのため」の計画であり、男達はことごとく利用される(された)だけという真実が、現実が、最後の最後になって明かされる。
いやあ・・・すごかった。すごい濃度だった。「物語」を堪能しました。
それはそうと、カッコいいなあこの装丁!!。