地方の閉鎖的な村(集落)が舞台で、濃密な人間関係の根幹には「信仰」や「言い伝え」があって、「呪い」があって、そこに「余所者」がやってきて・・・という定番オブ定番の設定を川瀬さんはどう料理するのだろうかと期待マックスで読み始めました。
学力を武器に村から出ることを現実的な目標としてる“聡い女子高生”が主人公で、東京からやってきた一家に同級生がいたところから物語は始まり、二人は友人となるわけですが、冒頭で学校の友人なる存在が登場し、それがこれまたよくいるタイプのマウント女であり、物語のなかに「ウイルス」の存在があって「陰性」だの「マスク着用」だのといった表現もあるもんだから“そっち系”の話になるのかと思いきや学校描写はほぼなくて、舞台はやはり『内部落』。じゃあその「ウイルス」という今だからこその要素を深く取り入れてくるのかと思ったらそれもほぼほぼなくて、村の掟は絶対!!な老人(というか主に女性たち)のガッチガチの価値観や論理に反発する主人公という目新しさ皆無の物語が四分の三ぐらいまで続くもんで、これはちょっと期待外れかな・・・となりました。なりかけました。
ところが村に起きているあれこれの「原因」が東京からやってきた友人の口から語られた瞬間一気にひっくり返った。
それまで起きていた「禁忌を犯してしまったがために起きた不吉な出来事」や「村人たちの不審な言動や行動」に『現実的な説明』がついてしまった。
そしてそれは法医昆虫学捜査官シリーズを描き続けている川瀬さんならでは、川瀬さんだからこそ余計な説明などいらずに「想像」と「理解」ができてしまうもので、思わずヨッシャきたー!と謎のテンションの上げ方をしてしまった。
さらに物語はそこで終わらず、村を出ることを強く望んでいた主人公の決意がもうね、作中で描かれる異なる時代の物語が誰のものでどんな意図のもとそれが現代の物語と繋がるのかが解るのとあいまって、あまりにも鮮やかかつ予想外の結末すぎて感嘆の一言です。やはり川瀬さんはすごい!!。