六月 歌舞伎鑑賞教室『解説・歌舞伎のみかた/連獅子』@国立劇場 大劇場

この歌舞伎鑑賞教室という企画はいつごろからやっているものなのでしょうか?。歌舞伎を観るようになってもう二十年以上経ちますが、わたし今回が初めての歌舞伎鑑賞教室でした。ていうか、こういう形で上演していることすら知りませんでした。うちからだと国立劇場ってアクセスがちょっと面倒なこともありあまりご縁がないので・・・という言い訳はさておき、初めての歌舞伎鑑賞教室はものすごくアウェーな感じで新鮮でした。ていうか、え?お値段4000円!??。

ある程度時間を取って歌舞伎役者自ら歌舞伎のみかたを解説するわけですから、想定されている観客層は学生さんだったり外国人だったり、歌舞伎を観たことがない人ということになるのでしょうが、わたしが観劇したのは土曜日でありながら1階席の前方12列までずらっと学生さんが座ってて、その後ろのセンターブロックも団体さん(幕間が20分なので食事の時間が間に合わず連獅子が開幕して5分ぐらいしてから揃って戻ってこられたので)それから2階には外国人のツアー客らしき方々が大勢いて、わたしのほうが肩身の狭い感じがしたほど(高校生だらけの幕間ロビーで缶ビールを呑んだりするからですw)。

そんな初歌舞伎の方々に向けて解説を担当されたのは坂東巳之助さんでした。ええ、わたしがアクセスの面倒さを乗り越えても観たい!と思った理由はここにあります。

幕が上がるとがらんとした舞台上に薄い緑基調の袴をお召しになった巳之助さんだけが立っていて、にこやかにテンポよくお話をされるのですが、お顔がずいぶんとふっくらしていてついついニヤニヤしちゃったよねw。三津五郎さんがお亡くなりになって以降、それを理由にわたしの気持ちがそう見せていたところはあるかもしれませんが(それは否定しません)あまり健康的には見えず、今はまだ若いからいいとしても身体が資本だしもうちょっと気を使ったほうがいいのでは・・・などと余計な心配をすることもあったりしましたが、いやあ・・・幸せそうだね!とニヤニヤが止まらんw。

クイズ形式で客席とコミュニケーションを取ったり、客席から2名を舞台にあげ歌舞伎の動きを教えたり、パネル(絵と写真)を使い連獅子のあらすじ紹介をしたりと、丁寧ながらもツッコミ入れたり適度に崩す巳之助さんの解説はまさに軽妙と言った感じで、時間としては35分ぐらいだったと思うのですがあっという間でした。『世界の街道から』のトーンに近い声音でとても聞きやすかったし。

幕間のビール片手に高校生たちの会話にダンボ状態で聴き耳立てたところ「話がうまい」という声が多く聞こえ、でしょでしょ!と心のなかでドヤる一方で「かっこいい」という声は聞こえず、み、みっさまのウリはそこじゃないもんね!と自分を慰めたりなんかして・・・w。

そうそう、高校生と言えば、国立劇場の舞台はとても奥行が広くて20メートルぐらいあると巳之助さんが言うと、あっちこっちでぴょこぴょこ客席から伸び上がって(立つまではいかない)舞台奥まで見ようとしてて、それがもぐらたたきみたいで面白かった(笑)。舞台マナー的にはダメなのでしょうが、こういうリアクションはほんと新鮮だし、ああ、わたしも舞台を見始めたときはその大きさに驚いたりしたなーと懐かしい気持ちにさせられました。

又五郎さんと歌昇さんの「連獅子」は、ザ・安定感でした。連獅子ってどうしても後シテの毛振りの印象が強いというか、ともすれば興奮しすぎてその記憶しか残らなかったりするんだけど、又五郎さんと歌昇くんはむしろ前シテの狂言師パートのほうが見応えがありました。動きのひとつひとつが丁寧で、舞台の両脇にある電光掲示板で義太夫の歌詞が流れることもあって連獅子(歌舞伎)を初めて観るひとでもなにをやっているのか理解ができるんじゃないかなと思いつつ、改めて前シテの面白さを再確認できた。後シテは歌昇くんの仔獅子が花道を一旦高速で引っ込むのにどよめく高校生の反応が微笑ましく、ピッタリ揃った毛振りで拍手が沸いて→やんで→沸いて→やんでを繰り返す、拍手が続かないというよりも「え?いつまでブンブンするの・・・?」という戸惑いがなかなかに新鮮でした。

隼人さんと福之助さんの間狂言はまあ・・・現時点ではこんなもんか。上手い人がやるとほんっとに面白い「宗論」ですが、そうでないとこんな感じになっちゃうのね・・・という発見がありましたわ。でも福之助くんには可能性を感じた。わたし三兄弟のなかでは福之助くんに最も期待をしているのですが、福之助くんの法連僧日門は「ここ」からどれだけ成長するか楽しみでなりません。対して隼人はイカン。福之助くんを引っ張ってやらねばならない(それを期待されての配役)だろうに、福之助くんとどっこいレベルじゃイカンだろう。でも繰り返しますが「現時点」。カッコいいだけじゃない役を演じる今の隼人さんを観ることができたことは収穫です(でもまた次は超カッコいい役やるんだよなーw)。