もはや毎年恒例になりつつある染五郎さん改め幸四郎さんと猿之助さんによる弥次さん喜多さんコンビの『東海道中膝栗毛』ですが、今年のサブタイは「再伊勢参!? YJKT」と書いて「またいくの こりないめんめん」と読むらしいですw。
2年前と同じくお伊勢参りの珍道中を描く作品ではありますが、前回と今回の大きな、大きすぎる違いは喜多さんが「死んでしまった」ことにあります。幕が上がると舞台のまんなかに喜多さんの大きな遺影が飾られその前で泣き崩れる弥次さん・・・という始まりがあれやこれあって幸四郎さんと猿之助さんだけでなく染五郎さんと團子さんと四人一緒に天国へ行くというエンディングを迎えるとか頭おかしい(笑)←褒め言葉w。
頭おかしいのは間違いないんだけどw、それでも今回は弥次喜多三部作のなかで最も話がまとまってたしトンチキはトンチキだけど道理が通ってたし、パロディも分かりやすく(今回のメインは「籠釣瓶」!猿之助さんが八つ橋(を模したお役)!)、過去2作ほどの驚き(インパクト)は少な目だけど舞台(作品)としての完成度はこれまでで一番高かったように思います。
ていうかこれ脚本にどれだけ猿之助さんが口を出されているのかわかりませんが、全編通してとにかく『弥次さんが喜多さんのこと好きすぎ・・・』としか思えず、他に思いようがなく、それは裏を返せば幸四郎さんに好かれたい猿之助さん・・・としかわたしには思えず、思いようがなく!!、もしかしたら今回で終わりかもしれない二人の弥次喜多の集大成として、ついに本気を出してきたな・・・!とか思った次第w。
ていうか夏の花形祭り!!。猿之助さんの身体のことや染五郎さんが幸四郎さんになったことで増えたであろうあらゆる負担を補うという事情があってのことかはわかりませんが、とにかく今年は前年以上に若手がババンと出番を与えられておりまして、実に“夏らしい”舞台上でありました。ええ、わたしウッハウハw。
だって歌舞伎座の舞台上に新・染五郎さんと團子さんと成駒屋三兄弟「しかいない」場面とかあるんですもの!。團子さんVS新・橋之助さんなんて場面があるんですもの!。
市川右近さんに至っては歌舞伎座のドセンで踊りますから!!。右近さん(もう右近ちゃんなんて呼べない・・・)(尾上右近くんは「くん」付けなのにw)達者すぎて震え慄かざるを得ません・・・っ!!。
米吉くんと新悟くんも安定安心の務めっぷりだし(閻魔大王の妻のとき、新悟くんの手にはピンクのムチが!!サディちゃん!!)、「女歌舞鬼」として舞う千之助くんも綺麗だし、どんな演出になるのかと思った弘太郎さんの「むく犬」と鶴松くんの「三毛猫」はこう来たか!だし、客入りの悪さをなんとかしようと勘三郎さんと三津五郎さんが始めた納涼歌舞伎が今や満席で、その舞台上で次世代の歌舞伎を担う若手たちが堂々と立ち演じてる。勘三郎さんと三津五郎さんの「想い」が猿之助さんや幸四郎さんに受け継がれ、そしてそれが今まさにその次の世代にも伝えられている瞬間なんだなあと、それを目撃できているのだなあと強く強く感じさせられた今年の弥次喜多であった。
・・・ってもう〆ちゃったけどw、今回の見どころは獅堂さん・七之助さん・中車さんの早替りですよ!。若手そっちのけで替わる変わる。それこそ猿之助さんで早替りなんざあ見慣れたもんだぜってなところですが、それが三人となるとやっぱすごいわ(笑)。
その早替り最大の見せ場は中盤のだんまりで、ただでさえ大人数のだんまりなのにその半数が早替り(役替わり)だもんで目が!目が足りないっつの!!。
そして宙乗りな。今年は幸四郎さんと猿之助さんだけでなく染五郎さんと團子さんも宙乗りしちゃうってんで張り切ってお迎え席(3Aの10番11番)を確保したわけですが、いやあ・・・金太郎さん改め染五郎さん、だんだんと近づいては来るものの顔面積が一向に変わらねえ!間近で見ても「顔ちっさ!!!!!!!!!美!!!!!!!!!!!!!」しか言葉がでませんでしたわ・・・。いやもう言葉すら出なかった。染五郎さんと團子さんは死んだ弥次さんと喜多さん(あ、喜多さんだけでなく結局弥次さんも死にます(笑)。女殺油地獄の舞台で油の始末中に滑って死んだ喜多さんに対し、弥次さんは喜多さん会いたさに地獄へ行った帰り現世に戻る鏡に勢いよく飛び込みすぎたせいで出口にあった岩に顔面からぶつかり流血死です(笑))を天国へ導くべく遣わされた天使という設定での宙乗りなのですが、冗談抜きでマジ天使。
あーあとどうしても書き残しておかねばならぬのが門之助さんですよ。今回は笑也さんがお隣の演舞場で綱手姫を務められてることから天照大神は神無月で不在ってな設定なんですが、その代わりに門之助さんが「基督」となり弥次さんと喜多さんを天国送りにするのはいいんだけどこの基督クッソテンションたけえ!!(笑)。なんかガッツポーズとかキメまくっててw、このシーンが今回最大のトンチキであったことを書き残しておきたい(笑)。
もう1幕は『雨乞其角』。こちらは其角を扇雀さん、大尽を彌十郎さんが務められるのですが、以下オール若手でこちらは正真正銘w爽やかなひと時でありました。
其角が乗る船の船頭が歌昇くんで、芸者と共に大尽が乗る船の船頭が虎之介くんでしたが、船を並べる場面で手前の歌昇くんの踊りをじっと見ながら背後で合わせる虎之介くんに燃えるものを感じてしまって思わず拳を握ったのはわたしですw。踊りのあと、再び船を出すってんで持ってたタオルをねじり鉢巻きにして頭に巻き(歌昇くんは肩に掛ける)、着物の裾をたくし上げて帯に挟む後ろ姿(尻)には違う意味で拳を握りましたがw。虎ちゃんすくすくとカッコよくなってくれてて嬉しいなー!(このところ、わたしにとっては虎之介くんの成長を拝むための納涼という側面がある)。