桐野 夏生『夜の谷を行く』

夜の谷を行く

夜の谷を行く

連合赤軍事件に関わり実刑判決を受けた女がそれから39年たった今、永田洋子の獄中死や姪の結婚、そして東日本大震災といった時流に煽られるように、忘れたいと思っていた過去と向き合うことになる。連合赤軍事件をベースに、永田洋子森恒夫といった実在の人物と活動を共にしていた女(たち)の物語です。
渋谷暴動の首謀者であり長年潜伏生活を送っていた活動家が逮捕されたというニュースを見た記憶がまだ新しいこともあり、時代の臭いのようなものを強く感じることができて、またもや巡り合わせの面白さを実感。
そんな過去を持ちながらも、過去を理由に名前を変えたり嘘をつくことはあれど今現在の生活はまぁ・・・普通で、孤独な女の毎日でしかなくって、最後の最後にドラマチックな真実が明かされはするもののでも読み終わって残るものといえばやっぱり孤独な女の人生なわけで、繰り返すけどそれは特別でもなんでもないもので、歴史に残る大事件に関わっていようがいまいが女ひとりの人生が行きつく先は孤独でしかないのかなとか思ったり、でも思い出したくなかろうが思い出すべき過去がある人生とそれすらない人生では孤独の中身は違うのかなとか思ったり、ちょっと憂鬱。