新妻さんキャロルと宮野さんイズミルの回を見ました。見比べるつもりで平方くんイズミルの回も取ってたんだけど、いざ公演日が近くなったらやっぱり怖くなってきてw手放してしまったヘタレはわたしですw。
だってコレ見て・・・
差がありすぎんだろ(笑)。
原作は遠い昔ぱらぱらと読んだような記憶があるような・・・メンフィスとかイズミルとかぼんやり記憶にあるような・・・ってなもんだったんで事前にとりあえず舞台でやるという4巻まではしっかり読んで臨みました。
これ、原作読んだうえで観るのと原作を知らずに観るの、どっちが正解だったんだろう。
ストーリーは至って単純で、富豪のアメリカ人が王家の墓を発掘したらその娘が古代エジプトへタイムスリップし、若きエジプト王に見初められ熱烈に愛される。隣の国の王子からも愛され取り合いに。やめてわたしのために争わないで。エジプト王が勝利し二人は結ばれました。ってただそれだけ。
そこに王の姉が絡むことでいろいろあったりするんだけど、ストーリー自体は原作を読まなくても十分理解できたでしょうが、結構、いやかなり展開は粗いし(キャロルが古代に連れていかれるのはいいとしてもそこから一度現代に戻り、さらにもう一度古代に行くのとか未読じゃ全く理解できないだろう)心情描写も薄めなんで、隙間を原作で埋めないと厳しかったかなー(4巻までしか読んでないんで「腕ポキ」と呼ばれているというエピソードは知らなかったんだけど、腕ポキした次の瞬間もう治ってて「腕折られたけど罪滅ぼしとして街に出られたからいいや♪」って楽しそうに歌い踊るのはポカンすぎた)(腕ポキしちゃって動揺し煩悶するメンフィスは可愛かったけど)。
でもなまじ原作を読んでいると原作にある見開き2ページ使ってどどーんと描かれた古代エジプトの壮大さ雄大さ、あの絵が舞台上に再現されてる!!・・・ってな感じはほとんどなくって(このために原作を読んだわたしでさえ)物足りなさというか違う違うそうじゃないだろう感が結構あってもどかしさでいっぱいになるという。
この舞台に限ったことじゃないけど、漫画原作舞台って場面転換が多いからセットが簡素であることが多いんだよね。あらゆる場面で使えるよう最大公約数のデザイン&動かしやすいように軽量化されてることが多い。で、この舞台もそうだった。百万もの民を従える王だというのに階段を数段上ったところに立ってられると「あれ?」って思っちゃうw。原作もさほど物理的に高いところに立ってるわけじゃないけど、期待してた『ファラオ感』が出せてはいなかったかなーと。演出的に。
演出的にと書いたのは、浦井くん自身は素敵なファラオだったから。
メンフィスって浦井くんとは真逆といっていいキャラクターだと思うんで、それをどう演じるのか楽しみでもあり心配でもあり・・・でしたが、ビジュアルは完璧といっていいほどだし、常にせかせか歩き回ってる印象が残るほどなんで“若き王”として生まれ育った威厳というか風格というか、王のオーラ的なものはやっぱりなかったかなぁ・・・とは思うものの原作ではさほど感じとれなかったメンフィスの優しさ、キャロルを愛おしく思ってるのに上手く伝えることができない、伝え方がわからない不器用さ、そこいらへんが伝わってきたのでキャロルがメンフィスを愛するようになることに説得力があって、まぁ俺様ファラオか?っつったらそうでもない・・・と言うしかないんだけど、わたしは好きだと思ったのね。だから余計にメンフィスの俺様感を助長するような演出であり曲で見せて聞かせて欲しいと感じました。
そういう意味では濱田めぐみさんのアイシスは歌で圧倒してた。圧倒された。なんかもう問答無用でアイシス様・・・っ!!とひれ伏したくなる感バリバリだった。
だからまぁ・・・浦井くん自身ももっと頑張れというか、浦井くんならもっとやれるだろうってな思いが残る。繰り返すけどほんっとビジュアルは素晴らしいのよ。黒髪をなびかせ颯爽とマントを翻す姿とかほんっと素敵なのに、それが劇中で生きてた(活きてた)とは言い切れないのが勿体無い。
ていうか、原作を読んで メンフィス→アイシス って姉上に対する敬愛の念は持ってるとわたしは解釈したんだけど、なんか姉上を“女扱い”してるっぽいのが気になったんだけど。姉上に顎クイしてニヤリと笑うなんてことはしないよなーと。むしろ姉上に頬を撫でられても無表情でされるがままってなイメージをわたしは抱いてた。キャロルに出会い愛するようになるまでメンフィスにとって女などどうでもいい存在だったと思うの。いずれ妻を娶るにせよ、エジプトのためになるのなら姉上としてもいいし、それこそヒッタイト国の王女であるミタムンでも構わない。その“誰でもいい”ってのを姉上に対する顎クイで描いたのだとしたら、それは違うんじゃないかなーと。これがメンフィスのオラオラ感を出すための演出のつもりなんだとしたら(であればそれをするのはキャロルに対して“のみ”にすべきだと思う)、2.5次元というものを根本的に理解してないんじゃないかなぁ。ビジュアルだけ再現してればいいってもんじゃないんだよ。
アイシス様が圧倒的でしたと書きましたが、メンフィスがそんなことをするからアイシスのメンフィスへの愛に心理的理由付けができてしまうんですよね。原作を読んでもアイシスが弟であるメンフィスを過剰に愛するのって“そういうもの(そういう設定)だから”と受け止めることしかできなかったけど、舞台ではアイシス様のメンフィス愛に共感とまではいかずとも気持ち的に理解ができてしまう。だからずっとずっと想い続けていた弟をどこぞの馬の骨ともわからん異国人の女に奪われた可哀想なアイシス様・・・という見え方になっちゃう。みんながみんなそうであるとは言いませんが、わたしにとってはそうだった。弟に拒絶され絶望しながらも弟を奪ったにっくき女を取り戻すための戦いに向かう弟に聖杯に汲んだナイルの水を差しだし無事を祈るアイシス様に同情しちゃって、だからメンフィスとキャロルが結婚するラストがハッピーエンドとは思えないんですよ。気持ち的に中途半端なままで終わってしまった。アイシス様のみならず現代ではライアン兄さんが今もキャロルを探し続けているわけで、決してハッピーエンドではないんですよってなことなら分かるんだけど、そういう意図ではない・・・・・・・・・よねぇ?。
あれ?でもイムホテップしか歌ってないし結婚発表の場にアイシス様不在で最後に呪詛のような言葉を紡いで終わるんでそういう側面もあったりするのか?(それを確かめるために再演も行かねばならぬのか・・・いや普通に当たり前に行くけどw)。
とは言え役者の皆様は素晴らしかったです。浦井くんのビジュアル完璧と書きましたが、わたしが一番「ほ、ほんもの・・・・・っ!!(笑)」と思ったのはそう、伊礼彼方さんのライアン兄さんです!!(笑)。
これね、見たひとはきっと分かってもらえると思うんですが、どうしても「(笑)」って付けちゃうよね(笑)。原作まんまのセミロングおかっぱにストライプスーツ、そして大門サングラスをキャラとして完全に着こなしちゃってますからね!!。
結構ハードル高いと思うんですよコレ。ひとりだけ現代人(キャロルも冒頭は現代人だけど)の恰好で古代エジプトをうろうろする(イメージカット)とか見え方・見せ方としてはかなり難しいと思うんだけど、彼方の異質なビジュアルが完全にいい方に転がってた。
原作では登場シーンが限られてるライアン兄さんだけど、舞台では2幕にメンフィスとイズミルと三重唱する場面があるんですよね。ここでわたしようやく気付いたんだけど、『舞台版』は“メンフィスとアイシス、キャロルとライアン、イズミルとミタムンという三組の兄妹(姉弟)の交差する運命”ってのがテーマなんだね。であればメンフィスとキャロルの恋愛過程よりもアイシスの心情を掘り下げるのも、ゾンビミタムンが頻繁に登場するのも納得・・・・・・かな。それがいいか悪いかは別として、意図としては理解できる気がする。
でもそのせいか、イズミルがキャロルを愛するようになるのが唐突すぎたんだよなぁ。最初こそ「妹の敵討ち」という大義名分を掲げメンフィス王の寵愛を受ける娘を攫ってエジプトに喧嘩を売ったわけだけど、最終的には『キャロルを巡る争い』になったわけですよね?。キャロルがそんな歌を唄ってたし。だったらゾンビミタムンを出さなきゃいいのにエジプトVSヒッタイトの最中うろうろひらひら踊り続けてるもんだから、イズミルの気持ちがどこにあるのか分かりにくい。イズミルがキャロルをほんとうに愛してるのかどうかはっきりしないから、メンフィスVSイズミルの熱量がどうにもこうにも上がんないんですよね。
なんつって、役者的にはウッハウハだったわけですが(笑)。
いやだってさあ!帝国劇場で浦井健治と伊礼彼方と宮野真守が三重唱してるんだよ!??。三人ともヅラ着用で!!!。なんかもういろいろ意味がわからないだろう!!。
一番演出に文句つけたいのは実はメンフィスVSイズミルの場面なんだけど(もっとカッコよく出来るはずなのに!!という意味で)、マントを華麗に翻す浦井くんと対峙するマモが見た目負けてなかったってだけでわたし感動しちゃって。
でも歌うとマモでした・・・(笑)。イズミルはロック調の熱くてカッコいいソロ曲があるんだけど、それ完全にマモ(笑)。歌唱法ってか発声は思ったよりもかなりミュージカルに寄せられてたけど、言葉で上手く説明できないんだけど歌いながらウインク寸前ぐらいに目をちょっと細めて薄く笑って首をコキッってするのよくやるじゃないですか。それやっちゃっててイズミルそんな顔しねえええええええええええ!!ってな(笑)。
それからオケピの両脇にある出島みたいなところにメンフィスと共に立って歌う場面があるんだけど、浦井くんメンフィスはポーズ決めながら歌ってるのにマモイズミルは客席に手を伸ばしちゃってて、その手なんだよ?と(笑)。
あとキャロルの周りをうろうろする時なんかの“動き”に舞台経験のなさがモロに出ちゃってた。両手広げる動きしかないんだよね。再演時には歌唱時含め動きのバリエーションを増やして欲しい。あーあと鞭ももうちょっと上手に扱えるようになるといいなー(笑)。キャロルを拷問すっぞ!!って鞭ペチンペチンするんだけど、4.5回振りおろし中2回ぐらいしかいい音出せてなくて残念すぎたw(てかイズミルの衣装って振袖みたいに袖が長いからそのせいで鞭を振るいにくいみたいで、いい音してるときは袖を手繰り寄せて持っててw、それがなんか・・・微妙でしたw)。
でも台詞(演技)に関しては満点あげたい!!!!!!!!!!。台詞の言い方といい聞こえ方(聞かせ方)といい、震えるほどに素晴らしかった!!!!!!!!!!。
それだけにイズミルの心情をもうちょっと丁寧に描いてくれれば・・・と思わずにはいられませんが、マモ好きフィルターを取っ払ってもこれは立派な帝劇デビューだと言っていいとわたしは思いますっ!!!。
イズミル(ヒッタイト)に仕える身でありながらミタムン王女の行方を探るためにエジプト王宮へ潜入するルカ役の矢田悠祐くんもビジュアル含め役にハマってて目を引いたし、わたし断然ヒッタイト派ですわ。
でも浦井くん目当てマモ目当てのわたしをもってしても濱田めぐみさんの圧倒的すぎる歌唱力にすべて持っていかれましたと言わざるを得ない。
いやあ・・・めぐさんのアイシス様凄まじいわ。アイシスというキャラとしてはこの歌声は強烈に強力で凶悪で、なんかもう「上手い」の次元が違う。事実上の主役である新妻さんはすげーだろうと思ってましたし実際凄かったんだけど、予想外に曲数が多かったこともあってめぐさんアイシス様が全てを圧倒しすぎてた。脚本・演出にどれだけ不満があろうとも、めぐさんアイシス様の歌でそんなものは吹っ飛んでしまった。