『真田丸』第24回「滅亡」

この作品の特徴として、人や状況なんかを“対比”させて描くというものがあると思うのだけど、陳腐な表現ですが「プライドを貫き通して死んだ氏政」と「生き残るためにプライドを捨てた政宗」ってのはこれまでで最もその要素が強かったなぁ。北条最後の“希望”は伊達だったことを思うとどっちがいいとか悪いとかじゃなくて、ズシンとくる。氏政の汁(全部掛け)かけご飯と政宗ずんだ餅のあらゆる意味での落差というかギャップ、これが1話の間で描かれたことだとは。
死を覚悟する氏政を説得するために家康と景勝と昌幸が駆けつけるというあまりにもな漫画的展開はまぁそれとして、氏政に掛ける三人の言葉もまた対照的で、元々の性格もあるだろうけど立場の違いで氏政に抱く想いが違って、見応えあった。
正信と直江と信繁、そして江雪斎のところへそれぞれの殿が戻ってきて、家康は自分に祈るような視線を向ける江雪斎に黙って首を振り、昌幸は「頑固な男じゃ」と一言残し、家康は正信と、昌幸は信繁を連れ部屋を出ていく。そして景勝と直江は・・・・・・置いといて(笑)、ひとり残された江雪斎はこれまで何度も殿を待ったのであろう場所に一礼し、ひとりでその場から去る。からの空を飛ぶ鷹。
家や立場や状況やいろんな要素が関係するし人それぞれではあるけれど、『主』を失うことの哀しみが、この場面、このカットに詰まってた。
上杉主従のやりとりは心底酷かったけど(笑)。氏政が聞き入れてくれなかったから結果的には「何も約束しておらぬ」けど、そのひと「髻を切る」って言いましたよ!直江さん!!(笑)。
ていうか、景勝様って“相手の言いたいこと”を読み取る能力ってないと思うのよ。腹芸とは違うんだけど、相手の言おうとしてることを察して先回りする的な、そういうことは出来ない人だと思うのよね。
つまり何が言いたいかというと、ここで直江が聞く前に「何も約束しておらぬ」と言ったということは、景勝様に対し直江が「何か約束しなかったでしょうね?」と尋ねるのはいつものこと、日常茶飯事のやりとり、言われなくても分かってます的なやつであろうと。なんていうか・・・・・・どっちもどっち?w。
出番的にはほんの僅かでしかないのに、その僅かな時間で毎回特大の爆弾を落としてくる直江様やっぱパねえわ。
あと利休を“死の商人”として描くのはとても興味深い。北条との戦を進言したのは“秀吉がそうしたいと思ってるから(そう言って欲しいと思ってるから)”だと思ってたんだけど、もちろんそれもあるんだろうけどそれよりも自分の利益のために戦が必要だってことかー。これは現代も在り続ける構図なわけで、そこに“不変”という言葉をあててはいけないのかもしれないけど、利休切腹に至る理由、その道筋として時代が変われど結局人間は同じことをやってるんだよなーと、そういう理解はできる。
そして氏政がああも見事に逝ったというのにその氏政を貶める“卑怯な策”でもって忍城を落としてみせた昌幸に、戦のやり方を教えてくれと言う三成。信繁はともかく昌幸は徳川憎しだけでは西軍につくにはまだ弱いと思ってたけど、そうか、ここを師弟関係にしちゃうのか。自分のダメなところをちゃんと認め、相手が“田舎者”だろうが頭を下げてお願いできる三成のことを、信繁も、昌幸も、男にしてやりたいと思ってしまうのだろう。これは今のところ、完全に共感できます。
・・・と思ってたら予告!!予告にいた三成の上裸!!!!!!!!!!
こんな身体して戦下手とかなんなのこの人・・・・・・っ!!!。
しかし、次男坊と同じ歳であり、弟殺しをはじめ結構すごい経験をしてきてながら殿下を前にああもへいこら太鼓持ちができちゃう伊達政宗という男を上っ面でしか見られない(認められない)トーチャンは相変わらず人を見る目ないですよね!w。まぁ今のところは「さすが殿下!お餅になってまいりましたーっ!」ってなテンション高めの田舎のヤンキー兄ちゃんでしかないのでしょうが(実演販売のノリを思い出したw)、あと20年早く生まれていればとかもっと京に近いところに住んでいたならという思いを抱えつつもあのメンツを前にしてあそこまで堂々と道化になれるってすごいことだと思うんだけど(でも20年早く生まれていようがもうちょい都会に住んでようが、そのぽよぽよした身体じゃダメじゃね?と思わなくもなかったですw)、そういう風に見られないのが昌幸という人間なのだろう。
あと前回この機に秀吉殺るか!とか言ってた出浦様に若干のガッカリ感を覚えたんだけど、昌幸がそういう人間だとわかった上でその“戯れ”に本気で付き合ってくれてるんだってことが分かってホッとしたわ。そうだよね、出浦様は真田昌幸という男に惚れて家臣となってくれたんだもんね。
信繁と政宗の語らいは(この時点では)どっちも普通の兄ちゃんなんだよなーって感じがしつつも、育ってきた環境・土台が違うからか見てるもの、見えてるものが違うってのが分かる気がして、この先のことを考えるとこれはいい下地作りになったと思う。
信繁はこうやっていろんな人の想いを背負って背負って天下の大戦に臨むんだろうけど、それはそうとして、茂誠に「松が生きてる」ってことをさっさと言わずに焦らし(蔵に戻ってこれたからいいものの殺されてたら言えなかったわけで)、さらに「でも記憶喪失だった(から義兄上のことを覚えてないかもしれない)」ってことは言わないままって、信繁性格悪くねえ?と思ったんだけどw。