深緑 野分『戦場のコックたち』

戦場のコックたち

戦場のコックたち

『戦いの合間にも、慌ただしく調理に追われ 不思議な謎に頭を悩ます――そう、
戦場でも事件は起きるし、解決する名探偵がいる。
1944年、若き合衆国コック兵が戦場で出合う<日常の謎>』
これが帯文なんですよね。そしてこの装丁。ときたら料理と謎を絡める気軽なタッチの作品かなーと思うじゃないですか(南極料理人(映画版)っぽいのかなーと予想しました)。
めちゃめちゃ重かった・・・・・・・・・。
普通に戦争小説だった・・・・・・・・・。
確かに若きコック(たち)が戦場で出合う不思議な出来事について考え解明する話ではありますが、戦争>>>>>日常の謎(解き)ぐらいの割合じゃないですか・・・。
しかも日常の謎の質がどんどんハードになっていくどころか●●●が死んじゃうとか!。
その直前不穏なことを言うもんだから、これ哀しい結末が待っているんじゃなかろうかという覚悟的なものをしようかどうかってところでまさかこんな展開になるだなんて・・・。
視点として明確な主人公はいますが、戦場のコック「たち」とタイトルがつけられているだけあって群像劇なんですよね。それぞれの事情や理由や目的を抱えて兵士となった若者たちはほんと普通で、そんな仲間たちがどんどんと命を落としたり壊れてしまっていくのを読み進めるのは辛かった。
最後の最後に名探偵ではなく主人公自身が謎解きをするのですが、謎を解いて終わりじゃないんですよね。そこからの物語がグッとくる。
そこにあるのは主人公の成長のみならず、「大切な親友が繋いでくれた」仲間の存在。この巧すぎる展開に唸らされました。
そんでもってのエピローグ。私が一番気に入った人物がまさかそんな想いを秘めていて、そんな人生を送っていただなんて!!。
こんな物語を読むつもりじゃなかったけれど、とてもとても面白かった。