『新春浅草歌舞伎』@浅草公会堂

初日から昨年と同じスケジュールで拝見しましたが、明らかに今年は客入りと客層が違う。4.5日の夜なんて結構空席が目立ってたのに今年は列の中に一席ぽつんと空いてるところはあれど全体を見ればかなり入ってるように見受けられました。1階席だけ見れば昨年が7割弱だとすれば今年は9割弱ぐらい入ってるんじゃないか?ってぐらい。そして若い客が増えた。若い女性の二人連れや若いカップルが1階席に結構居たんでパッと見て客層が「若い」と感じられて、これは明らかに昨年・・・どころかこれまでの浅草歌舞伎とは違うと感じました。

新春に浅草で若手主体の公演をやり続けること、やり続けてきたことの目的(のひとつ)はちょっとばっかり敷居を下げて観たことのない人や若い客に歌舞伎を観てもらうことにあるわけで、だから今年の客席は理想的だと言えるのではないか、とは思うのだけど、でも、でもですね・・・・・・この客席=結果が理由なのかどうかはまだわかりませんが、今年の浅草歌舞伎には昨年あったギラギラ感が全くないの。やってやるぜ!感がまったくもって感じられない。技量・能力の足りなさを補うだけの熱量がないんですよ。

浅草では若手が大役、それも初役を務めたりするわけで、客の大半は巧さとかそういうものを求めて足を運んでるわけじゃないよね。今月は東京だけでも四座で歌舞伎をやってるわけで、そういうものを見たけりゃ歌舞伎座なり国立なりに行くもの。だから浅草に求めるものってのはこの年代のがむしゃらさ、必死で頑張る若い役者そのもの、だよね。大役に挑みもがき、競い合い支え合いする中で見せる成長、見せてくれるかもしれない成長を求めて観にいくわけですよ。浅草に必要なものってとにかく熱意、云わば「心意気」だとわたしは思っていて、亀ちゃんやカンタから代替わりした去年の浅草歌舞伎にはそれが殊更あって、だからこそわたしは夢中になったのに、それがたった一年でなにこの落着き。なにこのぬるま湯。あまりにも勢いがなさ過ぎてやる気あんのかよ!?とすら思ったわ。

その理由がどこにあるのか、なににあるのか。まぁ・・・いくつかの理由を想像することは出来るし(それが正しいかどうかは別として)、長い目でみればこういうダメさもまた若手を見守る醍醐味ではあるんだけどさ、去年のあの初めてなのに崖っぷち!!からくる鬼気迫る気合い、それゆえの煌めきと比べてしまうとダメダメじゃねーかお前ら!と、主軸になってまだ2年なのに守りに入ってんじゃねーぞ!!と、技術以前の話として今年は今のところちょっといただけないと言わざるを得ない。

あと巳之助さんが一度もお目見えしないことを考えると準備やらなにやらで無理ということなのでしょうが、お年玉は二人ペアでやってくれた方が嬉しいし楽しいのになー。二人の関係性がそれぞれ楽しいわ可愛いわ面白いわで全ペア制覇したいがために通いたい!って思ったもん。


とまぁ愚痴ったところで各演目の一言感想を。


三人吉三巴白浪 大川端庚申塚の場』
わかっちゃいたけど隼人のお嬢デカッ!!予想はしてたけど「お嬢」感皆無w。お嬢の属性を考えればこれでもいいのかもしれないってか“男”が出ちゃった瞬間のわかりやすさが可笑しみに直結してて悪くはなかったけど、これ巷じゃ今でいうニューハーフじゃね?ってな存在として有名なのではなかろうか・・・w。

いくら浅草とはいえ隼人にお嬢をやらせる意味がいったいどこにあるのだろうか・・・とぼんやりする瞬間があることを否定することはできないのだけど、みのはやの波がきてるってか二人セットで追い風が吹いてることはわたしが思ってた以上に感じられたわけで、それに松竹が超のつく勢いで喰いついてるってことだけは伝わってきました(わたしはみのはやでもみのしんでもなくやっぱりみのかずですけど!!)。でも隼人に女形やらせるとか二人の「何」が求められているのかわかってないなと思うの。だって「月も朧に〜」のところ、台詞を言ってるだけで「聞かせる」ところまでは程遠い出来だとしても客席全く沸いてなかった(ここが見せ場だと伝わってなかった)わよ・・・?。まずは普通に寿曽我対面とかやらせときゃよかったのに無茶しやがって・・・。

ていうか三人で義兄弟の契りを結び血の杯を交わすシーンで腕を切るために袂を捲るみっくんの腕細っ!!!!!

今回松也を筆頭にデカかったり丸かったりする人たちばかりで、そんな中で巳之助さんは一際華奢に見えてですね、それなのにザ・男子な役ばかりだもんでなんかもう悲壮感すら漂ってましてですね、三人で見得するところで膝ついてるのによろけちゃったのにはわたしの僅かな母性本能が咆えまくりですわ。
これが他の人なら全力ダメ出しするところですが、みっくんだと「あれはダメだよねー」といいつつ「でも!みっくんはこれからだから」って言っちゃうダメ客でごめんなさい。巳之助さんに関しては今しばらくは全力デレの方向でいくと決めてるんで。
腕切ったところを止血すべく手ぬぐい咥えるみっくん美人だったしー!。


『土佐絵』
お正月らしい華やかな舞台だけど、華やかさがないんだよなぁ・・・。踊り素人のわたしではありますが、この三人って役以前の話として踊りの相性が良くない気がする。
あとこの演目を踊るには三人とも色気が足りないと思うの。女取りあってる感もなけりゃ男二人に取り合いされてる感もなし。繰り返しますが踊りについては「綺麗だなー」とか「楽しいなー」とかそれこそ小学生レベルの感想しか言えないレベルのド素人なんで技術的なことは全くわかりませんが、三人とも踊りに込められた『気持ち』が伝わってこないんだよね。
去年は独楽売も猩々もほんっとに楽しかったんだけど、その楽しさが今年はない。この「楽しさ」ってのは単純に演目の違い、踊り手の力量差ってだけじゃないと思う。


『与話情浮名横櫛 源氏店の場』
わたしが最も期待してた演目ですが、今年の演目の中では一番“観られる”かなー。松也の与三郎は思った通りの恋愛脳のチンピラ感で、わたしは好き。國矢くんの蝙蝠安とのバランス、関係性もよかったし。
だがしかし、着物の裾を割って座るのがだな、むっちむちでだな。足が太いのは別にいいんだけど白塗りしてることもあって異様にムッチリしてんだよね。ちょっと目のやり場に困る。といいつつ毎回双眼鏡を構えたんだけど。

でもこのむちむちな男がこの煙草覚えたての小娘みたいなお富とアレしたりコレしたりするのかと思うと・・・・・・なかなかエロいぞこれw。

米吉くんにお富はどうかなーと思ってたんだけど(新悟くんのほうが合うのではないかと)、はっきり「時蔵さんに教わったな」と判るほど忠実というか教えられた通りにやってるのはいいんだけど、それゆえ背後に時蔵さんが見えてしまって、だからやっぱりスレた感じというか貫禄というか、そういうものがなくてですね、途中までは「うーん・・・」って感じだったんだけど、お世話になってる旦那が実の父だと判明→与三郎と元サヤになっても問題ないじゃーん!ターンに入ってからのがっつき感はとてもよかったw。米吉くんって肉食女の役似合うよねw。


歌舞伎十八番の内 毛抜』
舞台に堂々と掲げられた「坂東巳之助 相勤め申し候」に泣きそうになり、幕外での引っ込み「皆々様のおかげで無事大役を勤めることができました」で泣いた。まだまだまだまだいろんなところが足りないんだろうけど、巳之助さんの弾正はしっかりと期待に応えてくれる出来です!!!。

弾正のおおらかさ、ともすれば変態スレスレの感じw、これはまぁちょっと・・・いやかなり・・・物足りなくはありましたが、なんといっても声の良さ。台詞聞こえは明瞭で声量も文句なしだし、ビシっと真相を解明する格好よさ、スーパーヒーロー感は出てます。

少年米吉くん(これがまた超絶可愛い!!!!!!!!)(これがエリート街道まっしぐらの隼人民部の弟だなんてときめくわっ!!)に乗馬の稽古をしてやるとスケベ心まる出しでスキンシップし汚らわしいものを見るような目で見下されるみっくん可愛い。

その次の瞬間お茶を持ってきた腰元新悟くんにも「姫の淹れた茶もいいがお前の淹れた茶が飲みたいぜ」と迫るも全く相手にされずこれまた汚いものを見るような目で見下されるみっくん可愛い。

そんで一人になってなんでか毛抜きでヒゲを抜き出し(殿の使者として婚礼相手の状況を確認すべく御宅訪問したというのにw)、煙草を吸おうとしたら傍らに置いた毛抜きが宙に浮いたもんだから「アレレー?」と『頬杖ついて』不思議がるみっくん弾正クッソ可愛い!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!。

それでいてスイッチ入るといい声で名探偵しちゃうとか、やっぱ粂寺弾正っていいキャラだし、巳之助さんに合ってる。
まぁ・・・まだ開幕して4日とはいえ全ての回で春道から授かった刀を差すところでモタついてたけどさ、そういうところも含めてこれからもずっとずっと見続けたい。巳之助さんの弾正を。

あ、忘れるところだった!。鶴松くんの鏡の前はよよよと泣き崩れるのが可憐でとてもかわいい。


義経千本桜 川連法眼館の場』
松也・・・・・・・・・・・狐やるならちょっと身体を絞ろう?。
狐じゃなくてイエティにしか見えないし、ぐるぐるまわってビクンビクンしてるのとかどう見ても打ち上げられた海洋獣よ?。

佐藤忠信のほうは悪くない、いやむしろ良いのではないか?ってぐらいなのに(みっくんの亀井六郎と国生の駿河次郎も)、源九郎狐が狐感皆無どころかなんかもう・・・・・・・可愛くはないだろうなーとは思ってたんだけど、可愛いとかそんな次元のモノではなかった・・・・・・・・・・・・・・・(察してください)。

初日を観終えたその足で浅草寺に行ってどうか松也が欄干に足引っかけてスっ転んだり欄干から落っこちたりぐるぐる回って柱に頭ぶつけたりせず無事に千穐楽を迎えられますようにと祈らずにはいられませんでした。こんなにハラハラする歌舞伎みたことない・・・。

でも多分松也さん自身がそこいらへん一番わかってると思うんで(わかっててほしい)、毎日お役を勤める中で動きが身体に入ればもうちょいなんとか・・・劇的に改善することはなくとも向上する余地はあると思うんです。だって今最底辺だからね!!。
なのでここからどれだけ進化できるか、上しかみなくていいからむしろ気楽だよ!!。ってあれ?そう考えたらなんかテンション上がってきたぞ?w。