川崎 草志『誘神』

誘神

誘神

地方にある独特な風習と異国で発生した未知の病原体(ウイルス)が結びつくという話のつもりで手に取ったので(私はわりとこの手の話が好きです)、両者をどう結びつけるかという興味で読み進めていたのですが、なかなか結びつかず、結局死者に死んだことを告げる「ツゲサン」という役目・・・でいいのかなぁ?それを行う孤独な少年の物語でウイルスどこ行った!?とは思ったけど(一応フォローはあります)、少年の話はそれはそれで読めました。というか、ウイルス絡めないほうがよかったような気が。まぁそれだと私のように“そういう話”だと思った読者はこれを手にすることはなかったかもしれないわけで、それなりの言い方悪いけど“釣り餌”は必要だったりするのでしょうが。
というか、少年のほかに女子大生の視点もあるんですが、こっちがウイルス面での物語を担うのかと思いきや存在意義がなんだかわからないまま終わってしまったのが勿体ないなと。こっちもこっちで「ヒトという種を終わらせる存在」とか面白そうな要素があるのに描き切れずに終わってしまった感が強いし、なによりツゲサンの少年と同じ年の弟がいて、弟はかつて神隠しに遭っていて、そこにツゲサン少年の父親が関わっていて・・・というネタを膨らませなかったのが納得いかん!!。孤独な少年と母親の死後寡黙になってしまった少年なんて美味しいネタ、それだけで1作できるのにー!!。