『里見八犬伝』@新国立劇場 中劇場・『吉例顔見世大歌舞伎 初世松本白鷗三十三回忌追善』@歌舞伎座

歌舞伎となにかをマチソワすると確実に後悔するぞっていい加減学習したはずなのに、またもややってしまいました。今月とにかくギッチギチで(11月の舞台重なり具合はこれわたしの観劇史上ベスト5に入るぐらいなんだけど・・・オタクの財布は根性無限だとしてもオタクの身体はどう頑張ってもひとり一体しかないんですよ・・・)ココしか見る時間が取れなかったというどうしようもない理由で。

で、新国立劇場でイケメン八犬士たちによる派手なアクション(殺陣)を見て、歌舞伎座目掛けてダッシュし10分弱の遅刻で席についたら今度は元服前の美形の少年(白井権八)が雲助と呼ばれる今でいうチンピラたちの顔面削いだりお尻削いだり肘から手を斬ったり膝から足を斬ったりと涼しい顔でとても酷いことをしてらっしゃいまして、そしたら通りかかった今でいうスカウトマンと人材派遣業を営む粋なお兄さん(播随院長兵衛)がそれを見ていて「お前の剣気にいった。江戸についたら俺のところにこいよ(意味深)」と誘うも足元に落ちてた手紙を読んで美少年が故郷で叔父を殺し逃亡中の手配犯だと気付くんだけど、でもそうとは言わず手紙を燃やし、さらにそれを見ていた雲助を権八に斬り殺させ、颯爽と江戸へ向かうのでした・・・という血みどろ話をコント仕立て(笑)でやってまして、ああ・・・これに比べたらイケメン八犬伝はかなり硬派な作品だったんだなと、ほぼほぼクソ野郎な八犬士にぼんやりしたけど、いくら相手がチンピラだからとはいえ美しい顔を表情一つかえず次々と切り刻み提灯の灯で刀が刃こぼれしてないか確認する権八君(10代)に比べたらマシだよなーとw、そう思えてしまった。

だってこの白井権八って実在した人なんだけど、地元で人殺して江戸に逃げて遊女と恋仲になって遊郭に入り浸るもまだ10代だから当然お金なんかなくって、100人以上を辻斬り(路上強盗)して金作ってたというクズ中のクズですもんw。それに比べたら血の繋がってない妹と駆け落ちしようとしたところを止められて養父を殺し、さらにその妹も幼馴染と取り合いする中殺してしまうも実は妹のことをそんなに好きじゃなくって、ただ逃げ出す(自由になる)名目として連れていこうとしただけだってな信乃さんとか全然マシだろ!w。

いやあ、前回はこの信乃像が認められなくてムカムカしながら観たもんですが(自分にかけてる要素(の文字)が入った珠を持っているという設定というか解釈は悪くないと思ったし、それぞれが死に際にその足りないものを埋めたり補ったりすることなく、足りないまんま、でもそれぞれ足りない自分を理解して、そしてその「無念」を信乃に託して死んでいくというのは熱量こそさほどないものの刹那的で“イケメン八犬伝”としてはアリなんじゃないかと思ったものの、信乃だけは結局中途半端で終わってしまうんで)(でもひとりひとり死ぬ度に珠が降りてきてピンスポあたって独白して珠がパリーンと割れるってな演出は超絶ダサくて萎えまくり)、今回は演じるのがどっちかといえばクズ属性の山崎賢人くんであったことに加えマイ楽の直後にクズ度としてははるか上をいく人間が主役の作品を観たことで、『あれ?深作息子版八犬伝そんなに悪くないんじゃね??』というところに落ち着きました(笑)。他者との比較も時には必要(笑)。

てか今回はほんっと信乃さんのキャス変に救われた気がするわ。誤解のないように声を大にしてお断りしておきますが、決して ニッシー<山崎くん というわけではありません!。この作品の「犬塚信乃」にはニッシーよりも山崎くんのほうが合っていたというただそれだけの話です(むしろ本来の信乃さんであればニッシーの方が確実にハマる)。前述したようにこの作品の信乃さんは一歩間違えたら外道の完全なるクズで、他人(八犬士)が中身はどうあれそれぞれ自分の意思・目的で行動しようとしているのに対しひとりだけそれを表明しようとはしないんだよね。表明しないくせに他人の批判はいっちょまえで、じゃあお前はどうするんだ?と聞かれると「もううんざりだっ」としか言わないから何考えてんのかわかんないのよ。ていうか何も考えてないのかもしれんとすら思うほど欠落してる男なんですよね。で、ニッシーって基本真面目なイメージじゃないですか?。わたしは西島隆弘という役者は感性の人なんだけど、何も考えずひらめきで勝負するという感性ではなく、考えて考えて考え抜いた結果導き出した答えに煌めきがある、その煌めきがニッシーの感性なんだと思ってるんですよね。だからそのイメージが枷になったかもしれませんが、とにかくこの作品のニッシー信乃さんは「ないわー」の一言だったの。

で、今回の山崎くん。ニッシーとは反対に山崎くんはこの信乃さんにピッタリ。ニッシーの信乃さんは間違っても女連れて逃げようとしたところを止めにきた義父を“つい”殺しちゃうような人間には見えなかったけど、山崎くんの信乃さんは普通にやりそうに見えた。いい意味で、いい意味でね!w情緒が欠落してる感じがあるから、どんだけクズ発言かましてもどんだけ自己中でも、『そういうヤツなんだなー』と思える佇まいだったのよね。嫌悪感があるのはニッシー信乃も山崎くん信乃も同様なんだけど、そこに違和感があるかないか、その違いは思ってたよりもはるかに大きかった。

あとまぁ初演は特に殺陣・アクションにおいて市瀬くんと友貴くんが群を抜きすぎてたのに対し今回はよくもわるくもどっこいレベルだったんでバトルシーンに関してはストレスなく見られたかな。まぁ逆に言うと初演はいっちーと友貴くんの殺陣があったから耐えられたんですけどね・・・w。

この流れで書いておこう。
友貴くんがやった親兵衛を前回小文吾弟役だった高杉くんが演じるってのがわたし的見所だったわけですが(高杉くんが出てなかったら多分観なかったと思う)、殺陣はね・・・これはもう比べものにならないのは明らかでしょうから特に書き残しておくことはありませんが、伏姫の幽霊に育てられたせいで他人の気持ちがわからないという無邪気で残酷な美少年としてはかなりよかったと思うの!!。
ていうかこれ絶対ミッチやった成果だよ!。笑顔なんだけど目が笑ってない、中身空っぽな感じはミッチを演じたからこそのものだと思う。そう思うと同時にあの長く苦しかった1年が蘇り思わず泣きそうになりましたw。

カテコで大角役の丸山くん(キョウリュウゴールド)と道節役の馬場ちゃん(ブルーバスター)と高杉くん(仮面ライダー龍玄)がキャッキャしながら三人並んでペコリって頭下げて捌けるんだけど、三人ともたぶん特撮に出てなかったら八犬士には入れなかったと思うんだよね。そう思うとほんとこみ上げる寸前でした。



歌舞伎座は勿論染五郎さんが初役で弁慶を務められる勧進帳目当てでした。あとまぁみのたんと隼人と萬ちゃんもだけどw。

話には聞いていましたが自分の目でみてもほんと可もなく不可もなく、至って真面目で丁寧な弁慶で、初役だと思えば上出来、だけど初役にしてはつまらない・・・というなんともそめそめらしい弁慶でございました。でも弁慶をやるために染五郎さんが重ねてきたであろう努力、とにかく努力、それが気持ちとして伝わってくるようで、弁慶の豪快さこそないものの吉右衛門さんの義経に対する忠義心であり律義さ、そういうものはとてもよかったと思う。一番不安だった声もギリギリ合格点だと思うし(生意気ですよねすいません)。そんなこんな全部ひっくるめて最後の六方は感動しました。六方に入る前、染五郎弁慶は人差し指で天を指し感謝するのを繰り返すんだけど、そこで染五郎さんは勿論のこと客席に万感の思いが満ちていくんだよね。そういうの全部込みで感動したわ。次も観るか?と聞かれたらちょっと考えちゃいそうだけど(やっぱりもっとそめそめのニンに合った役を観たいし)、でも弁慶役者の誕生に立ち会えて光栄です。なんかものすっごい精神的に消耗したけどw。

もう二度と拝める機会はないかもしれない吉右衛門さんの義経はやっぱり大きくて、富樫に守ってもらう必要なくねえ?ってか超強そうじゃねえ??(笑)感は否めませんが、でも凛々しく気品があって、何よりも多くはない台詞を発した瞬間の聴かせっぷりがすごかった。幸四郎さんの富樫が全く精彩のない念仏のような富樫だから余計に。

最初に書いた鬼畜美少年を演じたのは菊之助さんなのですが、菊ちゃんまじまじクールビューティーー!!!長兵衛が乗ってる駕籠の先に吊るされてる提灯に刀をかざして刃こぼれ確かめるシーンの美しさったら悲鳴もの!!。ついさっきまでネクストブレイクの大本命である山崎賢人くんを筆頭に所謂『イケメン』を大量に目にしてたのに、それに勝るとも劣らない、いや、美しさという意味ではやはり質の違いが明らかで、歌舞伎ってやっぱりすごい!!と再確認いたしました。これもまた同日観劇ゆえのことだよなー。

てかこの駕籠を使ったとんぼがすごかった!。横倒しにされた駕籠の真ん中(人が乗る部分)にとんぼ(前宙)きってすぽんって入るの!!。これはびっくりしたわー。

おやじ様の鮓屋は前半チンピラ(笑)。母親騙して金せしめるためにお茶に指つっこんで目につけて「ほら涙出てるだろ」とか言うクソ野郎(笑)。ここがほんっとに上手いから後半の展開がより一層悲壮なものになるんだよね。でももう勧進帳で頭ヘトヘトのところへダメ押しとばかりの鬱展開に心折れそうになったけど・・・。

わたしのお目当ては幸四郎さん演じる梶原景時の部下、つまりモブ役なんですが、亀寿さんに続き萬ちゃんみのたん隼人とモブのレベルたけええええええええええええええええええええ!!!。これだけでわたし満足(笑)。