NINAGAWA×SHAKESPEARE LEGEND 1『ロミオとジュリエット』@彩の国さいたま芸術劇場 小ホール

若っ!!!!!!!!!!!!!!


この一言に尽きる。

座長を筆頭に若いカンパニーであることはわかっていたけれど、年齢もさることながら精神が、魂が若い。愚直さがまぶしい。
若さゆえの狂騒に、若さゆえの情熱に、若さゆえの絶望に、とにかく圧倒されまくりでした。すごい熱量だった。『疾走感』という表現がこれほどまでに相応しい舞台はちょっとないかも。気持ちのみならず物理的にも。

物理的というのはですね、この舞台ってセットどころか“舞台”もないのね(ロレンス神父のデスクやキャピュレット家の霊廟(棺)といった小さなセットが場面に応じて用意されるんだけど、最初のシーンはロレンス神父が薬草を摘んでる“森”のセットで、これ暗転→次の瞬間目の前に草原が出現したもんだから初見時はとても驚いた。ほんの数秒で世界が変わるんだもん。演出そのものもすごいけどスタッフもすごい)。半楕円形と言えばいいいのかなぁ?『U』←こういう形の舞台をぐるっと客席が取り囲み、楕円の切れてる部分に工事現場の足場のような通路を組みそれが客席の後上部でぐるっと繋がってるという硬質な空間で、最前列と役者が立ってる場所が同じ高さなんですよ。だからわたしの足先50センチぐらいのところで半裸の兄ちゃんたちがバトってるわけですよ。すぐ隣の通路(階段)をヒャッハーしながら走りまくるわけですよ。怖いっつの!!。

ていうか役者はもちろん対面の客からも自分の姿が丸見えなわけで、見る気はなくとも足を動かしたりすれば視界に動くものが入ってしまうわけで(持ってたチケット全部最前でした)、だから3時間を越える時間ずーっと微動だにできなくて結構キツかったわぁ・・・。しかもわたしのことなんて目に入らないってわかってはいるけどでも演目が演目だけに綺麗な格好で行きたい乙女心が発動しw、あとまぁアンサンブルもみんなイケメンなんで女としての血も滾りw、そういう意味でも大変な舞台でしたw。


わたしロミオとジュリエットって嫌いなんですよね。だって登場人物みんな馬鹿なんだもん。特にロミオがちんこ脳だし。
でも菅田っちのロミオはそのちんこ脳っぷりが可愛くて、ジュリエットの部屋の下でジュリエットの言葉を聞いてモダモダニヤニヤゴロゴロしてんのとかアホ可愛すぎて、悪くなかった・・・ていうか菅田っちロミオ好き!って思ってしまった(笑)。

ていうか月川くんジュリエットがかなり“強い女”なんですよね。可憐というよりもしなやかで凛々しいジュリエットなの。だからジュリエットがロミオをリードしてる感じなんだよね。月川くんと菅田っちの実年齢や経験の差がどうでるかなーと思ってたんだけど、凛とした月川ジュリエットにアホわんこな菅田ロミオってのは上手いこと作り上げたなと。

そして蜷川さんが最後の最後に仕掛けた衝撃の結末。
ロミオとジュリエットの亡骸を前にしモンタギューとキャピュレット両家が和解したところにマシンガンの銃声が鳴り響き、次の瞬間全員が屍となり銃をぶっ放した男ひとりだけが無表情で立っている・・・というのがこの舞台のラストで、これはかなり好み!。
この男はモンタギューの人間なんだけど、なんどもなんども服を無理やり脱がされるという“イジメ”を受けてるんですよね。劇中でそのことについて説明は一切なく、傍からみれば馬鹿な若者たちの悪ふざけのようなんだけど、最後の最後で虐められてた男が虐めてた人間だろうがそうでなかろうが関係なく全員ぶっ殺すという「仕返し」にでるのです。
彼だけひとり違う戦いをしていたことが最後の最後になってわかるの。

イジメの仕返しならばモンタギューのやつらだけ殺せばいいだろうに対立するキャピュレットの人間も、さらに両家の争いを捌く大公も二人の理解者であった神父もまとめて全員殺される。誰であろうが容赦なく。このモンタギューの若者にとっては予期せぬ暴力、それ以外の人間にとっては理不尽な暴力ってのはいろんな解釈ができると思うんだけど、馬鹿だらけの登場人物の中でまぁマトモ(なほう)というイメージであるベンヴォーリオが一番激しく虐めてたことも合わせてこの凄惨な結末はすき。初見はウルトラポカーーーーンだったけど(笑)。

こうなってしまえばロミオとジュリエットの悲恋なんてなんの意味ももたないよね。命がけの恋だろうが大量の死体のなかの一体でしかない。
自分の立場を考えず、親や友人の気持ちも考えず、愛することに舞い上がってその結果死んだ馬鹿な二人の物語の結末として、そんな物語が嫌いなわたしはこのあっけない結末はむしろすき。これならば受け入れられる。


キャストはみんなよかったー!。パンフで蜷川さんが“イギリスのグローブ座でもオールメールをやってるけど全然美しくないんだ。これなら俺たちの方がずっと美しくていいものが作れるぜと思った”と仰ってるんだけど、いやもうほんとアンサンブル含め文句なしに『美しい男たち』で、これだけで価値がある(アンサンブルでは小松準弥くんというお名前でいいのかなぁ?モンタギューで一番背の高い子が好み。モンタギュー時はそこまででもないんだけどパーティシーンがすっごい綺麗な顔だった)。

なかでも矢野くんのマキューシオと生成くんのティボルトは最高にかっこよかった。
モンタギューはギャルソン系のモードなパンツにラフなトップスもしくは半裸ってのが基本スタイルで、キャピュレットは白のタンクかシャツにデニム(スリムタイプ)にブーツってのが基本スタイルなんだけど、半裸のモンタギューはみんなほっそいの。ガリガリってんじゃなく余計なものがついてない“細さ”なんだけど、それに比べたらキャピュレットはガッシリタイプが多くて、中でも生成くんの腹筋バッキバキの身体が際立っていてですね!(←鼻息荒くw)、ワイルドでチンピラ感バリバリの生成ティボルトとマジキチ全開のエキセントリックな矢野マキューシオとのバトルは殺陣がどうのってよりも単純に純粋に『ビジュアル』が素晴らしすぎた。

矢野くんマキュは脇腹を刺され息絶え絶えのふらっふらになりながらも「どっちの家もくたばりやがれ!!」と叫ぶんだけど、ロミオとジュリエットの“悲劇”はマキューシオの死から始まるわけで、その結末は実際に「どっちの家もくたばった」わけで、そういう意味でも矢野くんのマキューシオは特に印象に残りました。・・・まぁ乳とかもあったしねw。

といいつつわたしのお目当ては菊田くんのパリスでございました。
わたしパリスってネタキャラだと思ってたんですよね。ネタキャラってか残念ポジションの人。そういうイメージを持っていたのですが、菊田くんのパリスは劇中で再三ジュリエット父がアピールする通りの高スペックのマジイケメン伯爵で超戸惑った(笑)。
パリスも一応キャピュレット枠なんで白い衣装なんだけど、白いドレスシャツの上に白のロングジャケットを羽織り、でもボトムの形はモンタギューっぽいんだよね。これどんな意図があったのかなぁ?。パリス最大の見せ場であるジュリエットの棺の前でのロミオとの決闘を美しく見せるためってのもあるだろうし、あとまぁ印象としてキャピュレットよりもモンタギューの方が“おしゃれ”だったんで、ギャルソン調のボトムが流行の最先端だってこともあるのかなーなんて思ったんだけど、どんな意図があったにせよとにかく菊田くんパリスがめったくそ素敵だったのよおおおおおおおお!!。主要キャストみんなそんなに身長が高くないのね。だから菊田くんだってそこまで高くはないのに(厚底ブーツ履いてた)カテコで一列になると頭半分ぐらい高くって、とにかくとにかくカッコいいの!!!。
ロレンス神父の庵にいたところへジュリエットがやってきたシーンでジュリエットを背中越しに抱き寄せつつ耳元でねっとりささやくのも神経質で粘着っぽくっていい感じの気持ち悪さで、多分わたしこのシーン見ながら口開けてたわ(笑)。

そんなパリスだもんで、ロミオとの決闘に負けて霊廟の床に死体となって転がってんのが可哀想で可哀想で。ロミオとジュリエットが死んでいるのが発見されて両家の人間が集合して嘆いて和解してってやってる間パリスは床に放置されっぱなしとか酷くねえ!?。
・・・なんてことをわたしはこれまで一度たりとて考えたことがなかったんでw(目の前に菊田くんが転がってる席だった時菊田くんしか見てなかったわw)、それだけ菊田くんのパリスが魅力的なのだ、という結論(笑)。

菅田っちはねぇ・・・菅田っちのロミオは喜怒哀楽が全部同じ質なんだよね。喜ぶのも嘆くのも全部激しくて、最初から最後まで全力フルスロットルでとにかく突っ走る暴走ロミオ。言い換えれば一本調子と言えなくもないの。だけど技量的なものを補うだけのエネルギーに満ちていて、もう全身から煌めきが放出されまくってんだよね。恐ろしいほど瑞々しいの(あ、そうそう!ベンヴォがロミオに可愛い子は世の中にいっぱいいるんだぞって客席の女の子に絡む場面でわたしの隣の席の子がターゲットになった回があったんだけど、20センチぐらいの距離で見る菅田っちの肌ピッカピカのトゥッルンットゥッルンで一瞬気が遠くなったわw)。

菅田っちは舞台よりも映像のほうが向いてると思うんだ。菅田っちの現時点での最大の魅力は繊細な表情だと思うから。だけどこの全身から溢れ出る熱量を見てしまったらその考えを改めざるを得ない。
・・・・・・と思ったんだけど、でも実はわたしとーりが蜷川さんのヘンリー四世に出た時もそんなようなことを感じたんですよねw。舞台イケるじゃん!!って思ったの。

でもその後違う舞台でとーりを見たらやっぱり微妙だったんで、それはつまりとーりや菅田っちがこんなにも素敵であったのは蜷川幸雄という演出家の手腕によるものなのだ、ということではないかと。やっぱ若い男を演出させたら蜷川幸雄は最強だなと、千秋楽のカテコに登場した相変わらず若々しい蜷川さんを見ながら思うわたしでありました。


デビュー作のファイナルイベントで号泣してたことや、初舞台がボロボロだったことや、初座長でまたもや号泣してたことなんかを思うとさぁ、今この瞬間の菅田っちが蜷川幸雄の演出でロミオを演じるというこの巡りあわせに感謝しかないわ。こういう瞬間に立ち会えるからイケメンファンをやめられないんだよね!。