久々の30-DELUXでしたが、やっぱ30-DELUXの殺陣はいいなー。純粋に見てて楽しいしスカっとする。村井くんはちいさい身体で槍をぶんぶん振りまわし時には回し蹴りやパンチも使う粗野で粗暴で喧嘩上等な殺陣で、対するヒデ様は流麗な舞のようでありながら要所要所はビシっと型を決める殺陣(蛮幽鬼の太一を思いだした)と対照的だったのもあって、見応えありました。役柄も村井くんは野性児、ヒデ様は悲劇のプリンスと好対照でW主演目当てとしては満足でした。
だがしかし脚本がなぁ・・・。超ざっくりとした粗筋としては、村井くん演じるザッパとヒデ様演じるミズハは身分違いの友情を育んでるんだけど、ザッパはアツヒロ演じるミズハの兄に叔父殺しの罪を着せられ逃亡する羽目になるのね。それから数年後、ミズハは王になりザッパは奴隷たちの救世主となり最終的に一騎打ちするってな話なんだけど、この二人の物語に余計なものがいっぱいくっついてるんだよね。『W主演』なんだから二人の物語として描き切ればいいのに、世界樹(樹海)の話という軸もあって、まぁ『マホロバ』を描くために世界樹の存在が必要なのはわかるんだけどそこに物語を持たせる必要があるのだろうかと。だったら二人を引き裂く“敵役”である兄を掘り下げるべきじゃないのかなーと。
ていうかそもそも王子と“屍肉喰らいのザッパ”と呼ばれる見世物要員という立場の違いでありながらもミズハとザッパが仲良しである理由がわかんないのよ。言葉を知らないザッパ(喋れない理由はあとから判る)は基本誰彼構わず威嚇するんだけど、ミズハだけはそんなザッパを怖がらず人目を忍んで会いに行き、檻から出してやって遊びながら剣の技を競い合ったり言葉を教えてやったりするのね。この状態から物語が始まるわけですよ。二人が、というより、ミズハがザッパにこうまで入れ込む理由やそのキッカケは描かれない。ミズハの父である王は冷酷で残酷で非道な暴君だし、腹違い(ミズハは妾腹の子)の兄とも仲が悪いわけじゃなさそうだけどどこか壁があるように見える。だからミズハは孤独を抱えてて、ザッパを言い方悪いけどペットのように扱ってるうちに「友達」になった・・・とかさ、そんな感じかなーとか思いながら見てたんだけど、そのうちミズハには姉ちゃんがいることがわかるんだよね。多分この姉はミズハと同じ母親から生まれた100%血の繋がった姉だと思うのだけど(姉は肺病病みとして隔離されてて、王になったミズハも同じく肺病病みになるから)、『愛する姉貴』という存在がいるならザッパに構う必要ないじゃんと。二人が仲良くなる理由って云わば二人の物語のスタートラインだろうに、そこすっ飛ばして最初から“そういうもの”として描かれているので気持ち的にイマイチ入り込めきれないよなーと。
兄も兄で、なんでこんなに計算高く腹黒いのかわかんないわけですよ。結果的に王である父は長男ではなく妾腹の子である弟に王の座を与えたわけだけど、それまで王が兄よりも弟を“買ってる”描写があるわけではないからなぜ兄がこうまで策略を巡らせるのか理解できないんだよね。ていうか、兄が弟を嵌めて姉を殺させる→弟ブチ切れてテメーのせいだと親父をぶっ殺そうとする→キレた息子に親父大喜び→自分に斬りつける息子に「その目だ!」と言って王位(王冠)を与える・・・ってな流れで、つまり兄の策略が裏目に出た結果弟が王に選ばれたってことなんだよね。兄貴ダメじゃんと(笑)。だったら兄貴をもっと小悪党にすればいいのにキメ顔崩さずさらに樹海の女王も騙すんだよね。みんなコロコロ騙される。でもやっぱりこの計画も駄目で、最終的に世界樹に「うわー」って叫びながら呑み込まれるとかさぁ・・・兄貴何がしたかったの?感は否めない。兄貴の人間性がさっぱり見えないの。だからそんな男に騙される登場人物たちがバカに見える。
ていうか一番不満というか勿体ないなーと思ったのは、スタートラインこそふわっとした感じだったものの兄貴に翻弄された二人が再会し、かつて決めた合図を交わしながら一対一で勝負する(二人の物語としての)クライマックスシーンはすごく良かったんだよね。本来争いを好まぬ優しい男でありながら兄の策略によって最愛の姉の命を奪い父を殺し死神となったミズハは姉と同じ肺病に侵されながら死にたいと、殺されたいと願ってるのね。王になってからのミズハには苦しみしかなくて、殺されることで解放されたいと願ってるの。そんな願いをザッパが叶えてくれた。「お前を殺せるのは俺だけだろう?」と泣き笑いで言うザッパの腕に抱かれながら頬に手を伸ばしながら「会いたかったよ・・・」と言って死ぬミズハは最期の瞬間ようやっと本来のミズハに戻れたんだと思う。そしてミズハの亡骸を抱きかかえながら咆哮するザッパ。このシーンは村井くんもヒデ様も素晴らしくって、ほんと良かったんだよね。でもここからが長いの・・・。ヒデ様死んだあと、ヒデ様のことには一切触れられず母娘の話が続くのです・・・・・・。
え?これザッパとミズハの話でしょ???と。ヒノコ(だったかな・・・)とかいう娘のことなんてミズハには関係ないがなと。
その上清水さん演じるザッパの古馴染みでザッパに恋するオカマのターンとかあってですね、村井くんとヒデ様の熱演で感極まりそうになった気持ちが急速に冷えました。気持ちのピークは確実にザッパとミズハのタイマン勝負からのミズハの死であるのに、そこからだらだらと続くくだり坂が長すぎて、これがほんと勿体ないなーと。
この構成もうちょいなんとかならなかったのかなぁ・・・。10年前に上演したものに手を入れての再演ってなことだけど、であれば尚更そう思う。岸さんとか上手い人いっぱい出てるのに、結局役不足・・・・・・ってことになるのかなぁ?出番の多さとは関係なくその技量であり魅力を見せるだけの役ではないもんだからその点でも消化不良感が残ったし。
でも話自体は面白いと思うんだ。ザッパとミズハの友情物語はそれ単体で作って欲しいぐらい魅力あると思うし(って思うとやっぱ樹海パートが不要ってことになるんだよなぁ)、その時はぜひとも今回同様村井くん&ヒデ様でお願いしたい!!。・・・ってなことをアンケに書いて提出しました。ブラッシュアップし続ければ名作になる可能性があると思うからがんばって書いたわ。
ピュアっこ王子と死神と呼ばれる王、どちらのヒデ様も非常に麗しく、そしてこの美声はやはり最高の武器だなと改めて。
そして村井くんの主人公オーラはやはりすごい。もともと持ってる華とかそういうことではないと思うんだけど(素の村井くんに華があると思う人いないだろ?w)、ひとたび舞台の上に立つと圧倒的な生命力を纏うんだよね。ザッパという役は村井くんのその生命力を全開で発揮出来る役で、ひっさびさに文句なしにカッコいい村井くんを拝めてしあわせでした。・・・まぁビジュアルは微妙だけど、村井くんに関してはビジュアルじゃないからw。
いつもにも増してカオスな客層ででもまぁ村井くんファンが一番多いんだろうなーと思ってたんだけど、隣で母娘と思しき50代と20代ぐらいの女性二人組が並んで観てたんだけど休憩時間にパンフ仲良く眺めながら
娘「あ!あの人ディケイドクウガの人なんだ」
母「オダギリジョー!?」
娘「違うちがう。小野寺ユウスケ。ディケイドの方」
母「ああ、くっついて旅してた小っちゃい子か!」
ってな話をしてらっしゃいまして、ディケイドの話をあたりまえに出来る母娘関係を羨ましく思いつつも野性児みたいな主人公の片方が「オダギリジョーか否か」ぐらい見てわかんないかよとツッコんだよねw。
「クウガ」と聞いて「オダギリジョー」って名前がすぐ出るわけでさ、さらに「小野寺ユウスケ」と聞いて「(士くんに)くっついて旅してた小っちゃい子」って分かるってことはそれなりに特撮見てるお母様なんじゃないかと思うのよね。
だったら舞台上にオダギリジョーがいないことぐらいわかんだろうと(笑)。
そんな素敵な母娘は揃ってカテコでアツヒロさんに「キャアアアアアア!!」という歓声とともに大拍手を送り、舞台から捌けるアツヒロさんに両手ぶんぶん振ってアピってらっしゃいました。いろいろとエリートすぎる(笑)。