明治座創業140周年記念『十一月花形歌舞伎』夜の部

明治座で歌舞伎を見るのは初めてでした(わたしにとって明治座早乙女太一ですw)。
夜の部の演目は「三代猿之助四十八撰の内 通し狂言 天竺徳兵衛新噺 市川猿之助宙乗り相勤め申し候」ですが、これ一度見てみたいなーと思ってたんですよね。
・・・蝦蟇を(笑)。
もうぜひとも蝦蟇が乗った屋台崩しを真正面から見たい+宙乗りの兼ね合いで2階1列ドセン席を取ったんですが、めちゃめちゃ見やすくて大満足!。
ていうか1等席12,000円に「やすっっ!!やーーーーーーーっす!!!!!!」と叫んでしまったママンとわたしの来年が心配です。歯止めってさぁ・・・歯止めってなんだね?(ドまがお)。


この物語は鶴屋南北の「天竺徳兵衛韓噺」と「彩入御伽草」という怪談話を“綯い交ぜ”にして先代猿之助さんが作ったそうで、襲名公演でヤマトタケルを見た時も感じましたが先代猿之助さんの発想力とそれを表現・実現する力はほんと凄いなぁ。
『船頭の徳兵衛は天竺に流されたのち日本に戻ってきたことから天竺徳兵衛と呼ばれている。徳兵衛は船上で木曽官の亡霊に出会うが、木曽官が自らの父であること、実は朝鮮国王の臣下である父は吉岡宗観を名乗り今川家に入り、家宝の浪切丸を盗み日本転覆を図ろうとしたが失敗したことを聞かされ、その野望の継承とともに蝦蟇の妖術を授けられる。徳兵衛は野望達成に必要な名刀・浪切丸と名鏡・浪頭を手に入れるべく座頭に化け今川家に入り込むが・・・』
ってな話なんですが、猿之助さん演じる主役の徳兵衛はダークヒーロー。一方では旦那を殺す女房・おとわと殺される旦那・小平次、ついでに小平次の幽霊も全部一人で演じます。ついでに桜門の石川五右衛門をパロって「絶景かな絶景かな」とやるし、そんでもってラストは宙乗り籠抜けとまぁどこもかしこも猿之助さんだらけ(笑)。
ていうか天竺徳兵衛の話と今川家騒動の話の接点が無理やりすぎて、一応筋は通っているものの何がなにやら(笑)。
冒頭のシーンでは時事ネタをやるのがウリだそうで、オバマ再選と某石原の話をいつもの口調でペラペラと捲し立て最後は自身がCMしてる「ソルマック」の実物を手にしてドヤ顔だし、木琴演奏するし、何度も何度も早変わりするし、これぞ猿之助による猿之助(とそのオタ)のための舞台でした(笑)。
やはり舞台装置がすごい!。花道から舞台全部に波を模した布がひかれその上を普通に海に出せそうな大きさの船が動いてたり、その船に向かって進む小舟は動源なんなの!??だし、お目当ての大蝦蟇はまさに圧巻!!。ていうかちょおおおおおおおおおおおおおおカワイイの!!!。数メートルもの大きさの巨大カエルが妖術によって屋根の上に出現するというシュールな演出なんだけど、おっきな両目をパチパチさせつつパカーっと開けた口から赤い舌をチラチラさせ、身体からはスモークもくもく噴出させてるカエルちゃんがまじまじ可愛い!!!。他にも妖術授けられるシーンでもちっちゃなカエルが書物咥えて出てきたり、カエル着ぐるみの中から猿之助さんが出てきたり、こんなにもカエルがフィーチャーされる舞台はないと思う(笑)。豆しばも蝦蟇とコラボだぜ!!(→http://dogatch.jp/blog/mameshiba_news/index.html)。
まぁさすがにこれだけの装置を使うとなるとスムーズな舞台転換は難しいらしく、長いときでは5分も掛かってたのは仕方がないことだろう。
徳兵衛パートは正直カエルの印象しかないんだけど^^、今川家パートの方は演技で魅せてくださいました。旦那を冷酷に殺す鬼女房・おとわが素晴らしい!。おとわは猿弥さん演じる多九郎と不倫関係にあり夫の小平次を殺させようとしてるんだけど、この小平次がなっかなか死なないのねw。沼深く沈めても沈めても何度でも浮かびあがってくるの(この小平次も途中まで猿之助さんが演じてます)。そこへ首尾はどうだい?とおとわがやってくるんだけど、しぶとく粘る旦那の顔をダメ押しとばかりに足で蹴って沈めるのね。それでも旦那が浮かび上がり杭に必死で捕まると、小刀取り出して旦那の指をゴリゴリサクサク切り離すわけです!。ついに力尽き沼底へ沈む旦那。それを見ながら切り落とした指をポイッと沼に投げ捨てるのです!。おとわ鬼すぎる!!。その後何食わぬ顔で旦那の父親と妹がいる家に戻り、小平次の戻りが遅いと心配する二人に構わず愛人としっぽりタイムに突入するおとわマジマジ鬼すぎる!!!(笑)。
やっぱ猿之助さん・・・っていうか(元)亀ちゃんの女形はいいわー!。特にこういう毒女の役は憎らしいほどハマります!。
ハマってたと言えば、小平次の妹・おまきを演じた米吉くんですよ!!。これ博多座で上演した時は春猿さんが演じられてたそうで、それを米吉くんってだ、だいじょうぶ・・・・・?と思ってたんだけど、確実に春猿さんのおまきとは印象ってか女としての属性から違っちゃってるんだろうなーとは思ったもののw、死んだ兄のことよりも一目惚れしたイケメン(右近さん)の方が大事なんだもん!と父親に向かってあっけらかんと言っちゃう恋愛至上主義のアホ娘ってな感じがよーく出てて可愛かった(笑)。
ついでに言うと愛人と共謀して旦那殺して今さっきまでヤルことヤッてて愛人に酒の用意させてるところで義妹がちょっかいだしてる相手がイケメンと見るや否や「アタシの方がいいわよねー」と 本 気 で 迫るおとわ姐さんパねえw。
幽霊になった小平次もよかったわー。小平次って生前の感じだと草食系ってかナヨっとしたタイプの人に思えるんだけど(嫁強烈だしなw)、幽霊になったら超ノリノリw超アクティブw。こんな幽霊嫌だ(笑)。
「楼門五三桐」をパロった船櫓の場面はまだ襲名公演のあの感動をはっきりと覚えているので純粋に嬉しかったなー。
あとこの時襲名公演で猿翁さんがやった役を右近さんがやってるんだけど(同じ役ではないけれど)、右近さんに猿翁さんの姿がぼんやりと重なって、ちょっぴりこみ上げてしまいました。澤瀉魂。
「葛籠抜け」は以前松也・みのたん・カズが出てた日テレの番組に亀ちゃんがゲストに出たときスタジオでこれを実践してて、葛籠自体も何十キロかの重さがあるし葛籠をグッと押し広げるのに相当力が必要だってな話をしてたことを思い出して「ほおー!これがあの時の!」と感心しきり。
しかしあれだね。宙乗り中の猿之助さんから目線お手ふり頂けると興奮しちゃうよね(笑)。
最後は今川の奥方・葛城が巳年巳の日巳の刻生まれの自分の血を徳兵衛にかけることで蝦蟇の妖術が解け(カエルはヘビに弱いから)、鮮やかな紅葉をバックに一同揃って決めポーズ。


襲名公演でもそのことを強く感じたんだけど、澤瀉屋のチームワークはほんとうに素晴らしいなぁと。『猿之助』というスターを魅せるべく一丸となって動き支えてる。そして猿之助はそれに全力で応えてる。でもそれを表面には見せない。裏方はまるで戦場のごとき様相なのでしょうが、舞台上ではとことんザ・エンターテイメント。これぞプロの舞台だなーと。
このプロ集団を率いる四代目猿之助がこれからどんなものを見せてくれるのだろうか。その瞬間に立ち会えることを幸せに思います。頑張って稼がねば!(笑)。