『海辺のカフカ』@彩の国さいたま芸術劇場 大ホール

わたしジャンルは偏りまくりなもののそこそこ本は読むんです。再読を含めたら年間150〜200冊は読んでる。
だけど村上春樹は1冊も読んだことがありません。確かノルウェイの森が話題になった時だったかに「村上春樹」という作家の名前を認識したと思うのですが、その時になぜかわたしは村上春樹=今でいうスイーツ的なイメージを持ってしまい、その後世界中で翻訳され研究されているだとかノーベル賞の候補になったといったニュースを目にするたびにそのイメージがいかに間違っているのか思い知らされ続けてはいるものの、もうここまできたら意地というか、『趣味が読書といいつつ村上春樹を読んだことがない』というのがわたしの読書アイデンティティであるというか(笑)まぁそんなわけなんで、観劇にあたり原作があるならば1度は読む等出来る予習はしてから臨むのがモットーでありながらも原作は未読です。うん、言い訳(笑)。


興味ない人は以下を読むをクリックしないと思うんで、とりあえずこれだけは全世界に向けて叫びます。


この長谷川博己最高だから!!!!!!!!!!!!!!!!!!
セカバーや鈴木先生やミタさんで長谷川博己を知ったという人にこそこの舞台を見ていただきたいっ!!
いやむしろ長谷川博己=クズ野郎専門俳優だと思ってる人にこそこの大島さんを見ていただきたいっ!!!!!
舞台上の博己くんを久々に見ましたが、やはり長谷川博己は舞台の人です。この艶やかな色気は画面越しじゃ半減どころか10%伝わるかどうかってぐらいだから。



というわけで、博己くん大島さんの凄まじすぎるアレコレは以下に記します↓↓↓





わたしここのところ舞台感想が全く書けなくて、まぁ別に仕事じゃないから書けないからといって悩んだりはしませんが、でも感想を書くことで自分なりに感じたことをある程度客観的にまとめられたりはするので出来ることなら書きたいなーとは思っているものの、でもなぜか書く意欲がわかなかったのです。で、この舞台は久々になにがなんでも感想を書かねば!!!と思った。わたしの中の情動が触発されまくり、この舞台を見て感じたことをとにかく書き残しておかなくちゃ!!と強く思った。こんな昂ぶり本当に久々。
休憩を挟んで4時間という長丁場であることは事前に知っていたのであらゆる意味で自分が“保つ”のか不安でしたが、予想と覚悟に反して4時間があっという間・・・・・・・・・・・・はさすがに嘘だけどw、でも4時間舞台上から心が一瞬たりとも離れなかった。漏れ聞こえる話からして“あの原作をここまで忠実に演ればこのぐらいの時間は当然必要だし、むしろ4時間でよくここまで詰め込んだぐらい”のようですね(ちなみに脚本はフランク・ギャラティ)。
舞台の奥行きをいっぱいいっぱい使い、その上で透明の可動式アクリルケースに入れられた本棚や書斎や木々やバスやトラックや自販機、蜷川舞台ではお馴染みの小便器や骨格標本などなどあらゆるセットが黒子の手によって目まぐるしく動かされるのですが、このセット(演出)はすごかった。基本カフカの物語と猫と話せるナカタさんの物語が並行して描かれるスタイルなので視点及び場面の切り替えが多いのですが、このアクリルケースを通して二つの物語が視覚として統一感あるものとして感じられたし、その透明な板を通して見える光とかカーテン越しに感じる風は優しくそして美しく、一方でアクリルの箱がカフカが捕らえられている(自らを閉じ込めている)檻であり、大島さんが自ら選んだ世界であり、また人間という容れ物であり、この舞台(作品)を通して描く『迷宮』の『メタファー』なのかなーと思った。
中でも図書館と森(公園)の雰囲気は秀逸!!。風が通るんだよね。木々の間に吹いている風を感じるし、本棚の間に流れる静謐な空気が体感として伝わってくるの。わたしがこれまでに見た蜷川演出(つっても10本強ですが)の中でブッチギリで1番好きです。セットが単なる舞台装置ではなく登場人物と一体化してるというか、この空間にいるからこそ柳楽くんはカフカだし、田中裕子さんは佐伯さんとしてそこに存在することができている、というか、上手く表現できないんだけどこれだけ『セットが演じてる』作品はちょっと思い浮かばない。こんなに美しい舞台はちょっとないと思う。いやってほど後述するけど図書館の中にいる博己くん大島さんが素敵で素敵で素敵でねぇ・・・・・・(この記憶で1ヶ月は生きていける)。
それから柳楽くん演じるカフカと田中裕子さん演じる佐伯さんの最初の『交わり』シーンはこれ演劇史上有数の性交シーンと言っていいと思う。ぴったりとくっついた2つのアクリルケースの中でお互いがお互いの身体をそこにあるものとして愛撫し押し開いているんだけど、ここで柳楽くんは全裸(前張りはあるけどw)になるんですよ。あと着替えたりなんだりと結構身体を見せるんだけど、顔つきや声音は少年っぽさを感じさせるものの肉体はどうしたって20代の男のソレなわけでさ、特に上半身(肩から胸のあたり)はがっしりしてて「少年」の面影はないの。だから脱いだカフカはもしかしたら原作イメージとは違うのかもしれない。でも田中裕子さんのズブズブとどこまでも引きずりこまれそうな粘着性の色気と相まって、幻想的でありながらも生々しい凄みがあった。肉と肉がこすれあいぶつかりあうセックスの生々しさ。それはまぎれもなく「性」であり、それはイコール「生」なのかなーなんて。
一方で透明の壁が示すものは肉体の交わりだけではない、精神的な結びつき、心で繋がること、魂で交わりあうことなのかなー。ここが原作で文字としてどのように表現されているかは分かりませんが、まさに幻想と現の狭間での性行為で非常に美しいエロスでした。
で、その対極にいる存在が性別を超越してるかのごとき博己くんの大島さん。
見てる間はほんとうにいろんなことを受け取り感じ考えたし、それを書き残したいと思ったはずなのに、いざこうやって書き出すと浮かんでくるのは大島さんのことばかり・・・・・・。はぁ〜っ(←乙女溜息)。
なのでもう大島さん感想に突入してしまいます!気持ち悪いから覚悟しろよな!(笑)。
長谷川博己くん演じる大島さんはカフカが向った高松にある小さな図書館の職員(司書ではないのかな?)なのね。で、白いシャツにベージュのチノパンにスニーカーで受付に座り、鉛筆をペン回ししてるのが常なのです。まずこのペン回しが麗しい!ペンをくるくる回す指が!机についた肘から手首のラインが!白シャツの袖からのぞく真っ白くで細い手首が!!!!わたしはこんなにも美しくて妖しいペン回しを見たことがありませんっ!!!。
とハァハァしてたら机にあった華奢な銀縁フレームの眼鏡を・・・・・・・・・・・・装着したああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!あっあっあっ・・・←あまりの興奮にいきなり壊れた人w。
そんでカフカにどんな話してたんだか忘れたけど(笑)「3パターン」と言いながら指を3本立てるんだけどね、立てる指が人差し指中指薬指ではなく親指人差し指中指なのよ!!。なにそのキザな仕草!!たまらん!!。想像してみたらいいよ、柔らかな笑みを浮かべつつ知的っぽいことをペラペラ話しながら白くて細くて長い指を3本立てる白シャツ眼鏡の長谷川博己を。
・・・・・・・・・な?たまんねーべ?エロイべ??(笑)。
マグカップを持った右手の肘を左手で支えながら壁(か柱)にもたれる姿もたまんねーんスよおおおおおおおおおおおおおお!
鉛筆を手の中で優雅にくるっと回しおしりについた消しゴムでこめかみのあたりをつんつくしながら優しく話しをする姿が超絶エロイんすよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!
で、明日また来ていいですかと聞くカフカにふんわり笑って「また明日」って言いながら人差し指と中指にはさんだ鉛筆をひらひらって振るの・・・・・・・・・・・・・・・。
おいなんだこの俺好みドストライクすぎる男・・・・・・!!!!!(心の中で興奮のあまりボロ泣きしながら)。
てかこの時点ではこの男カマっぽいなーって思ってたんですよ。そこもまた好みなんでわたし的にはイイんだけどw、机の下で足を揃えて横に流してたりベンチでカップティーポットからお茶を注ぐ手つきだとかがやけにカマっぽいなと思ってたのね。
そしたらなんと。
大島さんは『生物学上も法律上も女性だけど見た目は男で心も男。でもすきなのは男。つまり女だけどゲイ』なんですってよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!
なにそれ最強すぎる・・・・・・・・・・・・・・・・!!!!!
(これは劇中で女性の地位向上がなんだかんだと煩いオバサン(二人とも巨乳w)に対して自分はそもそも性別的には女性なので女性差別主義の男性ではありえないと言い切る場面で投下されるビックリネタなのですが、それ聞いたカフカが「ビクッ!」とするのが可愛いw)
で、納得した。身悶えしながら超納得した。大島さんがそういう人だと分かった瞬間博己くんが大島さんになった。人当たりはいいんだけど、どこか他人を寄せ付けない、安易には近寄らせない、踏み込むことを許さない潔癖さであり頑なさがあって、だけどカフカにはちゃんと優しいのね。図書館でたくさん話をする中で社会という枠の中で生きることがヘタな田村カフカという少年に自分と同じものを感じ、そして好きになったのだと思う。そういう意味ではなく(途中までそういう意味があるんだと思ってたけどw)、多分タフさ(強さ)を求めるあまり自分という世界を破壊してしまいそうなカフカの緩衝材になってやりたいと思ったんじゃないかなーって。とにかく佇まいが素敵なのね。デスクに座ってるだけで、ベンチに座ってるだけで、マグカップもって立ってるだけで、そこにいるだけで素敵で、そしてカフカを包んでくれているのがわかる。
てか身長差やっべえええええええええええええええええええええええええ!!!精悍でともすれば獰猛さを感じさせるような少年でありながらも紛れもなく男である柳楽くんカフカと華奢で繊細でまさに性を超越してるがごときしなやかな博己くんの身長差がまじまじやっべーんだって!!!。
常にカフカを優しく導いてくれる大島さんは基本カフカの背中に手をあてて「さぁ、ついておいで」とはけるんだけど、それがもうめくるめく眼福の世界でしてねぇ・・・・・・(この記憶で1ヶ月は生きていける2回目)。
でも1度だけカフカの手を握って小走りにはける場面があって、そこちょっとどんくさ走りでくっそ萌えた(笑)。
あとあとカフカが借りた10冊ぐらいの本を本棚に戻すんだけど、本を本棚に戻しつつ手元の書類を確認する横顔!!!!!これがほんっっっっっっっっとに素敵で!!素敵すぎてもう腹立った(笑)。
ていうか大島さんのネームプレートの写真(スーツ)イケすぎ(笑)。


そんな大島さんとカフカの最高シーンはラストのコレ。
静かな雨の中立ち尽くすカフカは傘を差しかけてくれた大島さんに東京に戻ると、逃げてきた場所に再び戻ってちゃんと生きていくんだと宣言するのね。そして別れ際、
「さよなら、大島さん。そのネクタイ、とても素敵だよ」
「いつそう言ってくれるかと思ってた(にっこり)」
ピ、ピ、ピッギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!
叫びださないように奥歯ギリギリ+背後にぶっ倒れないよう膝の裏に手をあてて堪えつつ自我を必死で保ったわ・・・・・・・・・・
なにこの萌え会話。
え?これ原作通りなの?村上春樹ってこんな凄まじいもの書く人なの??????(←オロオロw)
話は前後しますが、↑このとんでもないシーンの直前にカフカが笑うんだよね。
「君はこれからどうするつもりなんだい?」と大島さんに聞かれたカフカは「東京に戻ろうと思います」とキッパリ言って小さく笑うの。
「君が笑うところを始めて見た気がするよ」と優しく笑いながら言う大島さん。
そう言われたカフカは「そうかも」って言いながらパアアアアッと晴れやかに笑うのです。
このカフカの笑顔が素晴らしかった。なんかもう・・・雨上がりの薄雲から漏れてくる太陽の光のごとき笑顔でね、なんだかわかんない涙がブワっとこみあげました。
そんでもっての「ネクタイとても素敵だよ」「いつ言ってくれるかと思ってた」ですよ!!!!!どうよコレ!????????(ドヤ顔でw)


大島さんはまさに今の長谷川博己がやるべき役、いや、今の長谷川博己でなければやれない役だと思った(でもサングラス似合わなすぎでワロタw)。
そしてそれは柳楽くんのカフカもそう。


思うに、柳楽くんは14歳に囚われたまんま今まで生きてきたのだと思う。世間という檻と、そして自分自身で作った二重の檻の中でもがき苦しみ今日まで生きてきたんじゃないかなーって。どこへ行こうとしても目を開けていられないほどの砂嵐に翻弄されていたんじゃないかなーって。それは多分カフカと同じ。柳楽くんが欲しかったのは押し付けられるイメージに、求められるイメージに、あらゆる要求に対して耐えられるだけの強さであり、15歳になったカフカと同じように、この舞台で柳楽くんもまた砂嵐の中一歩一歩進み始めたのだと思った。
繊細さと脆さと獰猛さが同居している15歳のカフカを、世界に抗いながらも世界を求め、大島さんに見守られ佐伯さんに包まれていく中で変わっていくカフカを演じられる俳優は他にもいるだろう。だけどラストシーンのこの笑顔を、『カフカの笑顔』を見せられるのは今の柳楽優弥しかいないとわたしは思う。
千秋楽のカーテンコールで顔がくしゃっとなったかと思ったら大きくて強い目からボロッボロ涙を零し手で顔を覆うようにして泣き出しちゃった柳楽くんは抑圧と重圧から開放されたって感じで、ほんっとにイイ顔で泣いてたんだよね。客席もみんな貰い泣きですよ(笑)。
で、ふと博己くんを見るとそんな柳楽くんをふんわりとした笑顔で見ててね、まじ大島さん!まじまじ大島さん!!大島さんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんっ!!!!!ってダダ泣きに(笑)。
こんな柳楽くんを見ることができてよかった。
そしてこれからの柳楽くんが楽しみで楽しみで仕方ないと思えることがすごく幸せです。


なんかまとめに入っちゃったけど(笑)他のキャストについても一言感想を。
母性とエロスを一つの肉体及び精神に同居させた田中裕子さんの佐伯さんは凄まじく官能的で、それでいて圧倒的な透明感。その二面性・・・とはちょっと違うんだけど、抱きしめているのにそれを感じられない儚さが「佐伯さん」でした。
もう一人の主役であるナカタさんを演じた木場さんは現実味のないほとんどファンタジーな役でありながらも血肉が通ってて、もうナカタさんの一挙手一投足に釘付けでした。愚かで、哀しいまでに愚かなんだけど、でもその真っ直ぐな優しさが愛おしくてたまらなかった。この人なら猫ちゃんたちも喋るよなー!って思えるもん(笑)。黒猫の大塚さんとのやりとりとか大島さんに対するのとは違う種類のときめきでジタバタしたくてたまらなかった(笑)。ジョニー・ウォーカーの猫惨殺シーンはナカタさんに感情移入ってかナカタさん目線で見ちゃってるもんだから鞄からミミさんが取り出された瞬間は絶望のあまり叫びそうだったし、そこでナカタさんが迷いなく選んだ道にはどうしようもなく哀しくて吐くかと思ったほど胸が苦しくなりました。
そんなナカタさんを支えてくれた高橋努さん演じる星野ちゃんものすごくよかった!。この物語に星野ちゃんがいなかったらと思うと恐ろしいよね(笑)。次から次へと精神(自分)を破壊されるかのごときやりとりが交わされている中で星野ちゃんが「難しいことはわかんねーや^^」って言ってくれると「ですよねー!!」って握手の手を伸ばしたくなったし(笑)。話の途中で眠るように死んだナカタさんに、お線香代わりのタバコに火をつけ「悪い死に方じゃねえよなー」って優しく言ってくれる星野ちゃんには泣かされたー。カーネルサンダースさんや哲学を語りながら極上セックスしてくれる売春婦も良かった。高橋努さんは映像でしか見たことないと思うんだけど、舞台上での佇まいが自然なのね。いい意味でセットと同化してた。
星野ちゃんが癒しならばその真逆に位置していたのがジョニー・ウォーカーアイヒマンの本を読むカフカと同時進行で描かれ、それまで完全に独立していたカフカとナカタさんの物語が交差する場面なので多分とても大切なことが描かれているのだろうなとは思ったけれど、凄惨で残虐な猫殺し描写に気をとられてそれどころじゃなかったわ・・・・・・。血塗れの猫の生首がずらっと並んだ冷蔵庫はさすがに強烈すぎ。こんなの書く人をスイーツだと思ってたわたしほんとどうかしてる。
カラスの柿澤くんはとにかく「イイ!!」。カフカ以外の誰とも絡まない独特な立ち位置なんだけど、クールでありながらも感情はひしひしと伝わってきて、そんでもって銀髪+黒シャツ黒スリムパンツが似合うのなんのって!!どこのアニメキャラかと思うがごときビジュアルでこれは蜷川さん好みだろー!(笑)。



精神的にすごく消耗を強いられる舞台でしたが見てよかった。というかこれを見てなかったら確実に人生ひとつ損してた。
繰り返しますが、舞台の長谷川博己はほんっとーーーーーーーーーーーーーーーーに素敵なので、もし興味を持たれた方がいらっしゃったら何がなんでも見なさい!と背中おしまくりますっ!!。