『夏目漱石の妻』最終話

このドラマの初回でも書きましたが、長谷川博己って最高だよな。
なんかもう、博己くんマジ最高しか言葉が出ない。
でもその「最高」の中身は違う。
初回ではひたすらそのビジュアルと長谷川博己が演じる「夏目金之助」という人物のキャラクター像の素敵さに対する「最高」という褒め言葉でしたが、最終回を観終えた今思う「長谷川博己は最高です」は長谷川博己という俳優に対する敬愛や尊敬を越えてもはや畏怖、血を吐きながら駆けつけた妻に「大丈夫」だと言い張る夏目金之助という男の凄まじい生き様と相まって、なんかもう、この人の役を演じることに対するスタンスが恐ろしくなりました。
これから先、こんな人生を何度も何度も生きることになるかもしれないと思うと、生きることを選ぶのかと思うと、長谷川博己という俳優が心底怖くなる。
怖くなったところで体調が回復して家に戻ることができたってんで「え?」となって、そんで仕事にかこつけてふたりで旅行して美しい緑(このドラマは全話通して「緑」の使い方、撮り方がとてもよかった)の中真っ白の服に身を包んだ二人がイチャイチャするラストに「え?え??」ってなったんだけど、この落差なんて言葉では言い表すことができない両極端なシーンを一人の人物として演じきることができるのが長谷川博己なのである。
このひとのすごいところはそれを感覚・感性でやってるわけではないところだと思う。逆に尾野真知子さんは感覚・感性で演じてる人だと思うわけで、それは天才ってことだと思うのね(夫の血で汚れた着物を着換えるために隣の部屋に行く場面、襖をちゃんと閉められないのが演出でなくオノマチから出た演技だとしたらほんと天才だと思う)。
だけど長谷川博己は天才じゃない。考えて考えて考えて、考えた末にあるのがこの演技だってところがすごいのだ。感性で演技するひとならば瞬間的に熱量を高められるのも分かる気がするけど(自分には全くない要素だからその感覚を理解することはできないけれど)、長谷川博己はおそらくそういうタイプではない。でもこれだけの熱量を放出することができる。尾野真知子と対等に戦うことができる。それはとことんまで考え抜いた結果に出した確たる答えがあるからじゃないかな。だから躊躇いなく振り切れる。このひとはそれを作品を通してずっとやり続けてるんだと思うんだよね。
もうさ、胃の痛みに耐えまさに命を振り絞るようにして小説を書き続けるもぶっ倒れて入院→ベッドの上でクッキー貪り食うとかほんとなんなのこのひと!?って感じでさー、ほんっとダメ人間なんだけど、ダメ人間をダメ人間としてこうまで魅力的に演じることができる博己くんが好きだ!大好きだ!!と改めて、心の底から思わずにはいられない。故の長谷川博己ってマジマジ最高だよな!!です。


最初は妻に「家に帰れ!」と言い張っていた夫が、家族(家庭)を守るために父を切りすてる決断をした妻に「帰る家がなくなったな」と言ってやることしかできなくて、そして死の淵で妻に対し「家に帰りたい」と願い、妻は「一緒に帰りましょう」と言う。
「私は愛されているのでしょうか?」と問う妻に「小説のことしか考えていないってのはいい答えだと思うよ(その通りだ)」と答える夫ってのがあって、そんでもっての「清は私のことでしょ?」「そういうことにしておこうか」か。


尾野真知子の演じる鏡子と長谷川博己の演じる金之助の関係性に気圧されすぎて、なんかもう・・・夫婦のことは他人がとやかく言うことじゃないですねと、夫婦の数だけ夫婦の関係性があるんだよなと、そんなことしか言えないわ。
もっともっとオノマチの鏡子さんと博己くんの金之助を見ていたい気持ちはあるけれど、でも濃度的には特濃というか、エネルギーがぎゅぎゅっと凝縮されていたので見応えは充分でした。面白かったー!。