綾辻 行人『奇面館の殺人』

奇面館の殺人 (講談社ノベルス)

奇面館の殺人 (講談社ノベルス)

奇妙なお面だらけの館(もちろん中村青司設計)+首なし殺人というこれ以上ない設定だというのに、なんだろう・・・この地味な感じは。
奇面館を読むにあたり、もう何十回目だか分からない十角館から読み直しテンションMAXまで持っていった私が悪いというか、調子乗り過ぎた面があるのは認めますが、それにしたって地味だよー!。事件そのものもそうだけど何よりも館が!からくりっぷりが小粒すぎる!!。いや違うな。からくり自体は相変わらず「よくもまぁこんなこと思いついたな中村青司(笑)」なんだけど、それをトリックに活かし切れてないというか、事件に外連味が足りないというか、まぁ・・・そんな感じ。
それに、「奇面(仮面)」という言葉から事前に予想していた通り今作の鍵は『同一性』ということになるのでしょうが、終盤明らかになる真相はちょっと無理があるというか、そんなにいなくねー!?と思えてしまってちょっとなぁ・・・。てかその条件下においてこのメンバーが集められたというのならば、参加者たちはそのことを予め知っているわけだから劇中でそれに触れないのはいいとしても瞳子が確認するくだりは普通に考えて不自然だと思うし、鹿谷がこの屋敷にやってきた時点で、というか日向からそれを渡された時点でそのことに対し「ははーん」でも「ほほーう」でもいいから何らかの反応を示して欲しい。てかやっぱり事件を検証する過程で誰もそのことに言及しないってのはおかしいよなぁ。もちろんそれはトリックに直結するわけだから言及しないのは当然として、それを不自然に思わせないだけのフォローをしてこそのトリックじゃないのかと。
てか黒尽くめの美青年(!!!)鬼丸さんはただ鬼丸という苗字なだけで過去作品とは何ら関係がない・・・・・・の・・・・・・・・・か?。


それにしても、個人で衛星を経由する携帯電話を持ってることが別段珍しくもない世の中になった今、吹雪の山荘とか嵐の孤島とか、そういうロマンを求めるのはもう無理なんだろうなぁ・・・と改めて感じてしまいました。もちろんこの作品のようにちょっと前の時代設定にするなり、何らかの理由をつけて予め連絡手段を取り上げてしまえばそれは可能ではあるけれど、気持ち的にあの頃ほど没頭できなくなってしまった、というかねぇ。