三崎 亜紀『決起!』

うーん・・・・・・。
ものすごく生意気な言い方になりますが、アイディアはすごくいいと思うんだ。「掃除」という架空のスポーツにそれを取り巻く環境、隠された歴史、隠さなければならない理由、日本的でありながらも異国っぽい世界観はさすが三崎さんという以外にないし、それらを描くにあたり完璧なまでの『設定』が三崎さんの頭の中にあるであろうことも理解できる。そんな中で大人の思惑に巻き込まれ翻弄されながらもそれに必死で抗い、それぞれがそれぞれのやり方で成長していく少年少女たちや、そんな彼らをあらゆる形で教え導いていく大人達のキャラクター設定やその配置はとてもいいと思う。だけど問題はその見せ方。
前作の感想でも書きましたがまず掃除というスポーツの魅力が相変わらずよく分からない。だから必然的に主人公たちが掃除に傾ける情熱も理解はできても共感はできない。難解な設定の説明に文字数が費やされている反面各キャラクターの心情描写はそうでもなくて、せっかく設定そのものはいい感じのキャラクターたちなのに血肉が通ってるようには見えない(読めない)。“配置されてるだけ”なんだよなぁ。世界観はどうあれこういうタイプの作品で所謂“キャラ萌え”ができないってのは致命的だと思う。
私が三崎作品に感じている魅力は一にも二にも圧倒的な非日常が日常(現実)の延長線上の中にポツンと存在するというその世界観で、それを淡々と、“そういう世界”として静かに描いているところなのですが、コロヨシシリーズ(と言っていいのかな?)は日常そのものがこれまでの三崎作品とは全く違うし(リアリティ皆無)その中で汗とか涙とかそういう『熱』を描いてて、つまり私が三崎作品に求めている(魅力を感じている)ものとは対極の作品なんだよね。それを理解してる上で、例えとして適切かどうかはわかりませんが、三崎さんのネームを『画』にしてくれる人がいたらなーと思わずにはいられない。土台の部分はほんとイイと思うの。そこにはちゃんと三崎さんの魅力が詰まってる。あとは見せ方だけなんだよー!。