桜庭 一樹『ばらばら死体の夜』

ばらばら死体の夜

ばらばら死体の夜

何故だかわかりませんが、冒頭で描かれるシーンを殺すものと殺されるものが逆として読んでいました。だから途中からいきなりガラっと雰囲気というか、空気が変わった気がしたのですが、桜庭さんの仕掛けに見事に引っかかったということなのだろうか。
貸金業法の改正(総量規制)を題材にした作品とは言え、それからイメージされるもの(具体的には新堂作品のような)とは全く異なり、“借金”そのものを描くのではなくそれは一つの結果というか、そうせざるを得なかった男女の孤独を描いた作品で、いかにも桜庭さんだなという感じです。いくつかの視点で語られるのですが、「砂漠」と名乗る不思議な女は勿論、女性翻訳家のパートがいい感じでねばつきとざらつきを感じさせてくれて、その反面男性パートはなんていうか・・・・・・パンチが弱い?んだよなぁ。やはり桜庭さんは「女」に限る。