- 作者: 日明恩
- 出版社/メーカー: 双葉社
- 発売日: 2009/10/21
- メディア: 単行本
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いわゆる劇場型犯罪モノ+妊婦のたらい回しや救急車のタクシー化などなど社会問題を織り込んだ作品なのですが、ネタそのものは悪くないけどとにかく視点の切り替えが多すぎて読んでいて気持ちがわるい。生田の視点で地の文を語ったかと思ったらそのままの流れで別の人物の視点で語られたり会話が挟まれたりするので統一感に著しく欠けてる気がしました。また、横軸として事件を報道するテレビ局の局員と無線を傍受する女子高生の視点でも語られるのですが、どっちも中途半端。テレビ局パートは事件を客観的に最も近くで描ける設定ながらそれを全く生かせてないし、無線を聞いてる女子高生のパートはいわば一般人の視点としての描写だろうに、救急車内の会話が全部無線で傍受されてる(犯人がそのことを頭に入れている)という設定がこれまた全く生かされてないもんだから“劇場型”の醍醐味が全く味わえなかった。犯人の要求に従う刑事の視点に至っては唐突に挟みこまれそのまんまフェードアウトするぐらいなら不要です。人物が上手いこと動かせてないから物語から緊迫感やスピード感が感じられなかったんだと思う。褒めるところがあるとすれば、クライマックスの消防車両のパレード描写と(リアリティは皆無ですが)、救急の現場をよく調べてるんだろうなということが伝わってくることぐらいかな。