末浦 広海『訣別の森』

訣別の森

訣別の森

第54回江戸川乱歩賞受賞作です。実は、乱歩賞受賞作品を読む一番の楽しみは巻末の選評なのですが、今回の恩田陸さんの選評内の“賞の性格や自分の作品の資質について送る前に一考してほしい”というのと“タイトルが酷すぎるのでもう少し自分の作品に愛を込めてタイトルをつけてほしい”という部分に激しく同意!そこが一番読み応えがありました(笑)。
この本を読む直前までドクターヘリを題材にしたドラマを見ていたこともあって、パイロットの人間関係や勤務形態を含めたヘリ描写は興味深く読めました。でも、これも選考委員のどなたかが書かれてたことですが、確かに登場人物がみんなやたらと活動的すぎるというか、言動が飛躍しすぎてる気はしました。少なくとも共感できる人物は皆無です。強いて言えばめんどくさい仕事を押し付けられたヤクザは上からも下からも突っつかれる中途半端な立場の悲哀みたいなものを感じとれなくもなかったですが。
動物モノにすこぶる弱いわたしは最後の最後でこの物語が“アリ”になりました。生態系やらなにやら無視して頑張って育ててくれるといいな・・・と人間ならではの傲慢な感想で締めたいと思います。