一田 和樹『檻の中の少女』

檻の中の少女 (a rose city fukuyama)

檻の中の少女 (a rose city fukuyama)

第3回ばらのまち福山ミステリー文学新人賞受賞作です。
寡聞にしてこの文学賞の名は全く知らなかったのですが、『島田荘司選』に釣られて手にとってみました。
ざっくりとしたあらすじとしてはサイバーセキュリティの専門家がネット上に存在している自殺支援サイトによって息子を殺されたと主張する老夫婦の依頼でそのサイトの調査・壊滅のために動く、という話なんですが、巻末の選評で島田さんが相当後半になったあたりで今作は「ハードボイルド小説なんだ」と理解したと書いてらっしゃって、思わず「ええええええ!?」と心の中で叫んでしまいました。だって私、読み始めて10分程度経過したあたりではもうハードボイルド小説のつもりで読んでたんですもの・・・・・・・・・。まぁ島田さんが仰ることの趣旨ってのはそうと気づかせないほど主人公の語り口や周囲の人間とのやりとりが軽妙(軽薄とも言う(笑))であり“イマっぽさ”を感じさせるってことなんだけどさ、それにしたって島荘・・・・・・・・・(笑)。
自殺サイトの運営システムの描写がやけに詳細だなぁと思ったら作者は元々そっち方面の専門家だそうでなるほどなと。調べたことを書いてるのではなく身についてる知識として描かれているので専門的なことを読まされるときにありがちなクドさは感じませんが、そのせいか主人公の凄腕っぷりもまたあんまり感じとれず、バランス的に難しいところだなぁ。
ハードボイルド小説として終えるのかと思っていたのでエピローグでいきなりサイコものに豹変したのはちょっと驚きました。続きが読みたいかも。