NODA・MAP第13回公演『キル』@シアターコクーン

再演を映像で見たことがあるのですが、実際に「キル」という舞台を生で見るのは今回が初めてでした。わたし野田演出とさほど相性よくないし、この舞台を見ると人に話すと見たことがある人は口を揃えて”難しいよ“言うのでどれほどのものかと覚悟レベルが尋常じゃなかったのですが、どうやらビビリすぎてたみたいw。ファッション戦争とモンゴルの権力闘争をリンクさせることに疑問を感じなければ(一緒に見たママンはこれが理解できないって憤慨してたw。でもママンは聡が見たかっただけなので別にいいらしい。聡可愛いわー可愛いわーってしばらく言うてた。さすが俺の母親だw)そこまで難しくもないんじゃないかなー、壮大な物語の欠片ぐらいは感じとれたかなーという気分です。
2階席のセンターで見たのですが、布と傾斜を多用した演出は見ててうっとりしたし、これは語弊があるかもしれないけど、まるでラップのように繰り出される「征服」と「制服」、「着る」と「切る」と「Kill」と「生きる」に代表される言葉遊びをめまぐるしく変換するのも疲れるけど楽しかった。テムジンと蒼い狼とのシンクロは蒼い狼に父親を重ねたテムジンの暴走した妄想だとして、蒼い狼そのものは実際に存在してたのか?それすらもテムジンが作り上げた幻影なのか?とか、テムジンが生まれた時と同じようにバンリが生まれた時と同じように、テムジンの死と同時に三度繰り返される生命の誕生は希望なのかそれとも連鎖なのか?とか、わたしの中で明確な答えを出せないラストだったのだけど、頭で理解できなくとも心で理解できる、言いたいことの欠片しかわからなくともなんか見れちゃう・・・これがキルという戯曲の持つパワーなのかなと思った。
実際主役の二人、ツマブと広末さんは(舞台で見る限り)役者として華奢だな・・・という印象で、ツマブのテムジンは若さゆえの暴走というのは伝わってきたんだけど野性味には乏しくて、若くてはちきれそうなエネルギーを感じられるわけでも征服者としてのギラギラとしたパワーを感じられるわけでもなくてやっぱりかわいいなーと思えてしまったし、広末さんは綺麗だし頭空っぽなモデルとして案内ガイドに導かれ仲間たちとワイワイやってる場面は良かったんだけど、シルクとしてテムジンと対峙するようになってからは色気が確実にないなーと思った。母となり結髪と関係を持ったあたりからはもうちょっと肉感がほしかったかなと。これそういう演出というかそういうものなのかもしれないんだけど、二人とも硬質すぎて、真っ直ぐすぎて、血が通ってないような感じを受けたんだよな。結髪や人形に比べて、だけど。あとやっぱりセリフが聞こえづらいところが結構あった。この舞台は特に途切れることのないセリフの応酬という感じなので、前後から聞こえづらかったセリフを想像する間が与えられないんだよな。だから結果として聞き逃したセリフが重なることで分からないことがちょっとずつ増えていく。それでもラストシーンの青空の美しさには思わず涙が出そうになって、この青空のしたではありとあらゆる感情なんてちっぽけに思えてしまうような晴れやかな気持ちになった。これがキルという舞台なんだろうな。
で、そんな舞台をキッチリ締めてくれたお二人が結髪役の勝村さんと人形役の高田聖子姉さんでございます。結髪はブ男設定だと思うんだけど、勝村さんの結髪普通にかっこいいんですけどw。テムジンとシルクの間を自分が書いた手紙の郵便屋させられる結髪のシーンがめちゃめちゃ面白かった。例えばじゅんさんとか池鉄さんとかそういう全力で面白いことやる!ってんでなく肩に力が入ってなくて、バッカでーwwって爆笑じゃなくなんだそれwwwって思わず笑いが漏れちゃうような感じ。聖子さんは舞台上の誰よりも声がビシっと通っててさすがだなと。わたしそんなに声量は気にならないほうだと思うんだけど、今回は主役の二人が揃って細かったせいか、聖子さんの声とセリフ聞こえのよさが際立ってると思った。テムジンの名前(男の名声?)だけで簡単にホイホイついてくのなんて「小劇場出身の女だけだよ」ってのに「ちょ!!!!!!」って突っ込むのバロスだったw。でもすごいそれ分かるw。
ロウ人形の人達は思いのほか出番が少なくて勿体ないなーと思った。中山さんのポロロンとか手塚さんの時すっごく面白かったんで秘かに期待してたんだけど、ほとんど印象に残ってないや。


うーん・・・やっぱり感想書くの難しいなぁ。何かを感じたことは確かなんだけど、その感じたことを言葉にするのが難しい。そういう意味ではやっぱり難しい舞台なのか。