香納 諒一『贄の夜会』

贄の夜会

贄の夜会

二人の女性が殺された。一人は両手首を切られ、もう一人は後頭部を何度も石段に叩きつけられて。二人の接点は《犯罪被害者家族の集い》。叩き上げの刑事・大河内は被害者の夫の行動に疑問を覚え夫の素性を調べようとするが、公安部から夫には触れるなと横槍が入る。夫は一体何者なのか。捜査過程で《犯罪被害者家族の集い》にパネラーとして参加していた弁護士の過去が明らかになる。弁護士は19年前に友達の首を切断し晒すという猟奇殺人を犯していたのだ。だが弁護士には事件当日に完璧なアリバイがあった。もし19年前の事件の際は少年だった弁護士の妄想だと判断された《透明な友人》が実在していたら――?少年の精神鑑定医の弟子である女性に会い、大河内はそう思うようになる。やがて事件は思わぬ広がりを見せ始め、事件の背後に存在する長年の警察腐敗に気付いた大河内はたった一人で事件に立ち向かうが・・・。猟奇的殺人鬼、狙撃者、孤独な刑事 三つ巴の闘いが今始まる。


ひっさしぶりにここまで読み応えのある作品に出会いました。これまで私が読んだ香納作品とは真逆と言っていいほどタイプの違う作品らしき上に、値段が3,000円となると買うまで2週間ほど躊躇した私ですが、断言します。確実に3,000円の価値あり!これ絶対読むべき!
猟奇的殺人鬼=サイコ、狙撃者=ハードボイルド、孤独な刑事=警察小説・・・って言っちゃうとなんか安っぽそうですが、いろんなジャンル(ジャンル分けの問題は置いといて)の美味しいところをちょっとづつつまみながら、それが無理なく違和感なくミックスされているという感じ。あまりにも要素を詰め込みすぎちゃったもんで、人物の背景や何本もある横軸のエピソードの描写が若干不十分、それから謎とされる存在(これが誰なのか、というのは早々に分かってしまいます)が遂に現れたあたりからの描き急ぎっぷりが気になるところではありますが、それでも充分堪能できました。作者の気合というか、気持ちが伝わってくる作品だと思った。題材は猟奇殺人だし、内容的には決して楽しい話ではないけれど、気分良く読めました。
たださー、この装丁はどうにかなりませんかね?ここ何作かは結構オサレな売れ線系だったのに、これじゃ売れるものも売れないと思うわけです。