木宮 条太郎『時は静かに戦慄く』

時は静かに戦慄く

時は静かに戦慄く

児童相談所の所長・山野は、このところ全国レベルで急増する児童虐待の報告に頭を悩ませていた。同時に、山野の義兄であり、京都府警捜査一課刑事の磐田も、多発する不可解な事件に気付く。そしていつもと同じに見えたある夜、京都の町は瞬く間に無差別殺人によるパニックに陥る。


第6回ホラーサスペンス大賞特別賞受賞作。予想以上にハードでドラマティックな物語でした。親族である二つの家族を軸に多視点で描かれる前半からすると、こういう展開になるとは想像できなかった。話としては面白くなかったわけじゃないんだけど、幼い頃に離ればなれになった兄弟とか、実は血の繋がりはなかったとか、チープな設定が所々に登場するもんで、何万人死にましたか!?ってぐらいスプラッターな状況なのに、なんか笑っちゃった。進化論という神秘的かつ壮大なテーマなんだけど、そのチープさのお陰でとっつき易い物語になってます。登場人物にいい意味で愛情を感じないというか、その清々しいまでの殺しっぷりが好印象。次作にも期待します。