阿部 和重『□』

□ しかく

□ しかく

阿部和重初の連作短編集。そして血みどろホラーサスペンスというわけで、これまで私が読んだ阿部和重作品の中で最もストーリーを追いやすいというか、描かれている事象は解りやすかったんですよ。シンプルなんで。この表現が正しいかはわかりませんがチープで滑稽で、とても面白かった。
だけどこの物語で阿部和重が何を描こうとしているのか、それが全くわからなくって、読みながら「わーどうしよう・・・どうしようっ」って思い続けてたんですよね。面白いのに理解ができない。それがとても苦しかった。・・・信者なんで(笑)。
で、阿部さんの公式に掲載されているこの作品についてのインタビューを読んだら、今作は『なにも決めずに書く』ことをテーマとし、小説を書くという行為に対する初期衝動だけの状態に立ち返って『□』という記号を起点に春夏秋冬(四季)を織り込んでいくらでも広がっていくイメージを制御しそして小説として仕上げるという作業だったそうで、これまでの執筆の仕方とは違い阿部さんの見聞きしたものや考えたこと考えてることがかなりストレートに反映されているので珍しく阿部和重自身が素直に出ている作品なのかもしれない・・・と、そう書かれてまして、私ごときが阿部和重を理解できるわけがないわけで、なのでそう思ったら分からなかった(分かることができなかった)ことがむしろ嬉しくなりました(笑)。
インタビュー(→http://abekazushige.cork.mu/interview/)の中からあまりにもカッコよすぎて身悶えした受け答えを抜粋。

なにも決めず自由に書こうと思いながらも、職業病のように物語の設計図が浮かんでしまうし、結局は監禁や拷問を描いている。自由に振る舞おうとしたはずなのに、不自由な方向に行ってしまっている。そんな自分自身の矛盾した状況が、作品世界にも反映されている気はします。

やっぱり、人は自由になれないということですよ。□という四辺をぐるぐる回って、同じことをくり返している。自分自身に監禁され、拷問されている(笑)。


『自由に振舞おうとしたはずなのに、不自由な方向に行ってしまっている』
『自分自身に監禁され、拷問されている』


やだもう阿部和重が好きすぎて頭おかしくなりそう(笑)。