黒川 博行『絵が殺した』

竹の子に押し上げられた白骨死体が発見された。身元確認は難航するかに思われたが、丹後半島で失踪したとされる売れない日本画家とアッサリ判明。捜査が進むにつれ、その背後には日本絵画の贋作事件見え隠れし、第二、第三の殺人へと続いていく。ブンと総長シリーズの名脇役「ハンサムコップ吉永誠一」堂々の主役作品です。これまた端整な本格作品。美術界が舞台で、警察以外の登場人物もほぼ美術関係者。そのせいかいつもよりお上品な気がしました。主役が吉永刑事だからもあるかな。相棒役の後輩がボケーっとしたやつで、黒マメコンビやブンと総長コンビみたいな打てば響く的なかけあいは少なめ。その分、物語のキーマンでもある事件の関係者がおもろいオッサンなんだけど、ああブンと絡ませたいー!とか思った。事件は、追い詰めたと思った側から容疑者が死んでいくし、関係者にはみなアリバイがあるということで、アリバイ崩しもの。土地勘がまったくないので、移動にかかる時間なんかがイメージしづらかったんだけど、それでも動機も含めて充分納得できると思った。ラストが美しいなぁ(絵面は汚いけど)。それからあとがきがこれまた素敵。次は11月。ハードボイルド路線の『切断』ですよ。ああ、こんなにいっぱい読めて幸せ。