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現在猛烈自分内落語ブーム中なので、これは読むしかないべ!と鼻息荒く読みました。
「三人目の幽霊」が第4回創元推理短編賞佳作だそうで、デビュー作。これと最新刊「やさしい死神」が短編集で、「七度狐」が長編です。
憧れの出版社に入社したものの、落語専門誌「季刊落語」の編集部に配属されてしまった間宮緑と、その上司であり唯一の同僚(総員2名の編集部)である牧大路コンビが活躍する落語シリーズ。
シリーズものなんだけど、3冊それぞれ味わいが違う。
「三人目の幽霊」は、落語をネタにしてるけど、それほど密接に結びついているわけではなく、落語界以外が舞台となってる話も収録されているし、扱う事件も派閥や名跡争いだったり、何かに執着する人の心のだったりと、思ったより「普通」で端正なミステリといった感じ。
「七度狐」はド本格。嵐で陸の孤島となった静岡の山奥にある寂れた旅館を舞台に連続殺人が起きる。しかも見立て殺人。見立てに使われたのは、幻の七度狐(落語の噺)。そして45年前に起きた失踪事件の謎。牧は遠く離れた北海道にいるため、前半は安楽椅子モノ的な要素もあり、本格エキス満載の村ミステリです。
で、最新作の「やさしい死神」は、「三人目〜」と同じようなパターンなんだけど、師匠と弟子の関係や親子関係など、ホロリとするような人情モノばかり収録されているので、流れる空気が穏やかで軽くて暖かい。「三人目〜」と比較すると、落語のネタと事件の絡み具合が段違いに進歩してます。
どれもそれぞれ面白かった。すべてちゃんと謎とき要素があるので、ミステリとしてももちろんなんだけど、落語パートというか、いろんな噺家が落語を演じてる部分が生き生きとしていて分りやすい。落語のネタが分からないと物語のオチが分からないわけで、特に「やさしい〜」はその点完璧でした。
新米編集者だった緑も、名人級の師匠達に少しずつ認めてもらえるようになり、編集長の牧とも対等に意見を言い合えるようになってきたりと、その成長っぷりもまた楽しい。
楽しみなシリーズがいっこ増えました。
とりあえず落語行かなきゃ。