垣根 涼介『サウダージ』

サウダージ

サウダージ

ヒートアイランド」「ギャングスター・レッスン」の続編。渋谷でチームのヘッドをしていたアキがある事件を通じて知り合ったアンダーグラウンドをターゲットにするプロの泥棒チームスカウトされ、裏の身分や環境など周到な準備をし、泥棒としての知識や技術を蓄え泥棒デビューしたところまでがこれまでの話。で、今作ではとうとうでっかい仕事をするんだろうな、と思いこんでたわけでして。それが読み終わってみたら・・・アクションほとんどなし。全編下手な恋愛小説。めちゃめちゃタルい。いい歳した男がウダウダ恋愛で悩むような話なんて特別おもしろくもなんともない。アキの恋愛と元仲間でありこの作品のキーパーソンとなる高木という男の恋愛と2本立てで、一方は元不良が初めてのまともな恋愛にとまどうと。でもう片方が孤独で残忍な男が馬鹿で陽気な南米から来た売春婦相手に気がつくといつも相手のペースに巻き込まれて、困りながらも満更でもないと。どっちもセックスシーンは満載。でもちっともエロくない、悪い意味で。それに、どっちの恋愛にも何の感情も持てないんだよな。理解でも同情でも軽蔑でもなんでもいいから感じたいと思うんだけど、ほんと何にもなかった。人物造形はそれなりなのになぜだろう。大の恋愛小説嫌いなので、自分でバリア張ったのかもしれないけど。高木の内面や過去に関しては、この著者の「ワイルド・ソウル」を読んでいないとイマイチ理解しにくいかもしれない。もっともっとブラジル移民の物語を書きたいがために無理やりこういう路線の物語にしたのかなぁと思ったぐらい、前2作品と温度が違うから。この先も続編が出るのかどうか分からないけど、やっぱりでっかい仕事に挑戦するアクション満載の話が読みたいなーと思う。