井上 悠宇『不実在探偵の推理』

はじめましての作家さんです。
タイトルの通り探偵が「不実在」であるという、これも「特殊設定ミステリ」に含まれるのだろうか?どうもまだジャンルとしての「特殊設定」を掴めていないのですが、それはさておき語り部である大学生にだけ「視える」が「言葉を発することができない」名探偵とのコミュニケーションが青いダイスであり、名探偵が答えることができるのはダイスの目に設定した「ハイ」「イイエ」「ワカラナイ」「関係ナイ」という4パターンのみという設定なので、大学生の叔父である刑事とその相棒と三人で4パターンの答えを引き出せる質問を繰り返す謎解きの手法は面白かった。

でも私は「不実在探偵」よりも大学生の母親のほうに興味があるんだよなー。
「不実在探偵」については曖昧なまま終わるので、少なくとも続編はありそうだけど、「不実在探偵」についての解明よりも母親を掘り下げて欲しいし、母親がなぜ兄に敵意を抱くようになったのか等、そこにある人間関係を読みたいと思ってしまう。