西澤 保彦『異分子の彼女 腕貫探偵オンライン』

もともと安楽椅子探偵ではあるんだけど、今作は「コロナ禍」なので「リモートで相談を受ける」というスタイルで、腕貫さんの周りでワイワイやってるレギュラーキャラは一切出てくることはなく、街中に設置された「相談窓口」として画面越しに市民とやりとりするだけなので、正真正銘完全無欠の「安楽椅子探偵」でした。
そして相変わらずホイホイ殺人がおきるな櫃洗市・・・ではあるんだけど、そこは「コロナ禍」であるからなのか今回は3篇中2篇が「過去の殺人」を腕貫さんなりの「解明」をするという内容で、いつもそうじゃんといえばそうなんだけど「オンライン」だからなのかなんなのか、相談者の話を聞くだけでその場でその真相にたどり着くかよ腕貫さん・・・!という、畏敬というか畏怖というか、そんな感じがより強かったです。

ところで小説に限らずどんな作品でも最近はLGBTQ要素があったりするわけなんですが、まるでノルマだろ・・・ってな描写も少なくないなかで西澤作品の「ただの個性」としての描き方はさすがの年季だなと言わざるをえない。そういう意味で西澤作品は「理想」だと思う。