中山 七里『越境刑事』

新疆ウイグル自治区出身の留学生が凄惨なリンチの痕を身体に残し死体で発見され、留学生のバイト先のオーナーも殺され、留学生の同僚女性が県警に保護と求めてくるが、女性は中国公安部の人間たちに拉致されウイグル自治区へと連れ去られてしまい、女性を取り戻し留学生とオーナーの二人を殺した犯人を捕まえるべく県警のアマゾネスこと高遠冴子とその部下郡山がたった二人で中国まで追いかける、という物語です。

↑このあらすじから受ける印象はたぶん「荒唐無稽」だと思うのですが、物語の中心にあるのは中国入りして早々に捕らえられてしまった冴子が受ける数々の拷問で、それはおそらく「荒唐無稽」ではないのだろう。
冴子が心を折られかけつつも必死で自我を保ち、一瞬の隙を逃さず脱出を試みたその時に郡山が中国を憎むイスラム系ゲリラとともに救出にやってきたところからはまさに「荒唐無稽」な展開になるので、余計に中国政府がその存在を隠匿していることも含め収容所内の描写が“実際に行われていることなのでは?”と思わされてしまう。
さすがに鵜呑みにはしないけど(かといってこの問題について調べてみようとしないのが私の愚かなところなんだよな)。