月村 了衛『影の中の影』

影の中の影

影の中の影

警察庁のエリートキャリアが在日米軍内での麻薬売買の捜査中に婚約者諸共殺されそうになるが、友人のCIA職員に自分だけ助けられ、その後公的には死亡扱いとなり国外で自暴自棄中にKGB経由で仕事を依頼され、やがて裏社会でその名を知られる存在となった。一方ウイグル自治区の問題について調べる女ジャーナリストは、取材中に襲われ瀕死の取材相手から「カーガー」という言葉を知り、さらに中国による人体実験の事実を知ってしまう。ウイグル人と共に中国の暗殺部隊から狙われる羽目になったジャーナリストの前に現れた男の正体は・・・とまぁこんな話でして、まさに荒唐無稽ですよね。でも妙な説得力があるんですよ。これに限らずこれまでに読んだ月村作品は総じてそうで、つまり月村さんは言い方悪いですが「こじつけ」が上手いんだと思う。日本の武闘派ヤクザと中国の暗殺部隊が殺し合いとか「ねーよ(笑)」ってなもんだけど、そこに国家間の駆け引きと末端の戦闘員たちの感情を上手いこと絡ませてくれるんで、読めちゃうんですよ。
そしていつもながら登場人物の関係性が見事に私のツボをついてくれる。今回は伝説の男とヤクザの若頭の関係がソレかと思ったら、さらにもひとつ熱い男のドラマがありまして、ほんと悔しいまでに私のツボ。