歌野 晶午『首切り島の一夜』

帯に「新本格が存在しなかった世界線の、21世紀本格」という法月綸太郎さんのコメントがあるんですが、目に入った瞬間「どういうこと?」と思い、読み終わっても「言ってる意味がわからない」んですが。

高校時代の同窓生が元教師とともにかつての修学旅行の再現旅にでかけ、参加者の一人が殺されるところから物語は始まり、折しもその夜は悪天候のため明日にならなければ警察は来ないというなかで、章ごとにタイトルを参加者の名前とし、ひとりひとりがその夜なにを思っていたのかが描かれる・・・のかと思ってたら章が進むにつれて思い出話だったり事情だったり「個人の話」になっていき、事件に関わりがあるようには思えないこの「それぞれの話」が「殺人」にどう関わり繋がっていくのだろうかと読み進めたのに無関係のまま終わってしまう、徹頭徹尾「個人の話」でしかなかったことに驚いた。
わりと胸糞というか、人間性に問題があるアラ還男女(元教師は除く)の話を我慢して読み進めたのは各個人の話がひとつになる瞬間のためなのに「なにもなかった」。

まあ「ひとつになるのだろう」ってのは結果的には私の思い込みでしかなかったんで、そこで裏切られたとか言うつもりはないんだけどさ、殺人事件の「真相」もなんだかなーって感じだし、これが歌野さんの「新境地」だというならば今後は新刊を見つけたら即買うようなことはしないようにしよう(内容を確かめてから手を出そう)とは思う。たった1冊でそう思ってしまうぐらいダメだった。好きな作家さんなんでそんなふうに思いたくないんだけど。