『ミステリと言う勿れ』episode.9

電線が切れたことによる停電で整くんと風呂光さんがガレージに閉じ込められてしまうという原作エピソードにはないドラマオリジナル展開を開始数分の段階で入れたのは、それがこの後なんらかの事象に繫がるから、そのために必要だからこういう改変をしたんだと思ったんですよ。
そしてそれは当然この場に風呂光さんが居る、本来はいないはずのキャラクターを本来ならばいるキャラクターをいないことにしてまで押し込んだ理由に繫がるのだと、それならばアイビーハウス編が終わった後納得できるのではないかと願うような気持ちで期待してたんですが、えーっと、無意味だったね?。

強いてこの改変を評価するとすれば、橘高が自分のスマホに電話を掛けてくれるよう天達に頼むところが原作よりも自然だったってことぐらいで、修理業者が来るというイレギュラーな状況に“焦った”というわりには特に(原作とは違う)その焦りを見て取れる行動をとったわけでもなく、レンくんを風呂光さんに変えた意味がマジで皆無だったのにはもはやなにも言う気はしないんだけど(このエピソードで最も大切なことは整くんが他人(レンくん)から「ほんとのこと言われるとちょっとホッとするからさ」と言われることだとわたしは解釈しているので、それすら風呂光に言わせず「デラさんたちが刑事だなんて全然わかりませんでしたテヘ☆」って脱力なんてレベルじゃねーでしょ)、まーあ佐々木蔵之介ですよね。蔵之介の狂気があらゆる不満をねじ伏せた。

橘高の動機ってこの作品全体を通してもかなり「悪質」で、到底理解などできるものではないのだけれど、佐々木蔵之介が肉付けした橘高勝という男からは“かつての栄光を忘れられないプライド高き男”感が滲み出ていて、この男にとって「あのときのミス」がどれほどの鎖となっているのかが原作以上に伝わってきたし、そういうものを抱えながらの家族の介護、大学教授や親の遺産でのうのうと暮らす友人に対し役所で書類にまみれる自分、それすらも辞めることになるであろう現実からの逃避、そこへもってきての友人の誘いによって「殺される前に殺さなきゃ」となった精神状態を理解はできずとも咀嚼はできるものになってた。

初回のエンケンさんもそうだったけど、「落ちた」ときの表情で物語をビシっと締めてくれると気持ちがいいよね。内容的には気持ちのいいもんじゃないとしても。

ていうか渋谷くん今回は犯人・悪人役じゃなかったどころか原作よりもずっとカッコよくって大勝利!!!。

あとアイビーハウス編は(過去の事件も含め謎解きとしては粗があるけど)やっぱり面白いなと再確認。
連ドラでこのレベルの作劇に出会えるとほんっとーーーーーーーにドラマ好きやっててよかったなと思います。