誉田 哲也『フェイクフィクション』

面白かったー!。けっこう厚みがある作品なんだけど文字通り「あっという間」に読んでしまった。というか、夢中になって読んでたもんで電車乗り過ごしました(今年1回目)(年に数回ある)。

東京の五日市で首無し死体が発見されるところから物語は始まって、キリスト教系の新興宗教を中心にして警察と信者と教団を潰そうとする者たちの戦いを描いた作品ですが、とにかくキャラクターが素晴らしい。個々のキャラクターが魅力的であることは勿論のこと、その関係性、なぜその人物がそういう立ち位置で物語に関わるのか、そこがまあ見事に完璧で、なかでも作中で「チャンピオン」とからかい気味に呼ばれる元キックボクサーの男が抜群にイイ。
他の人物たちはみな「サダイの家」という宗教団体に対してそれぞれ強い関わりと感情を抱いているのに対しこの男は「惚れた女が出家信者だった」というだけの関わりなんですよね。動機は恋愛感情なんですよ。そういう存在を物語の中心に置くことで、物語に軽妙さが生まれる。ゆえに読みやすい。こういうところ誉田さんは実に巧いよねえ。

ククリナイフで首を刎ねられ殺されたりヤクザが指三本詰めたりする世界観ではありますが、それぞれがキッチリ「落とし前」をつけて、そして新しい人生を歩き出すエンディングは爽やかで、読み終わった瞬間「あー面白かった!」と思えるって幸せだよね。世津子さん(成子さん)カッコよすぎて惚れそう!。