2022年 劇団☆新感線42周年興行 春公演 いのうえ歌舞伎『神州無頼街』@東京建物ブリリアホール

「偽義経冥界歌」は緊急事態宣言でチケットを所持していた公演すべてが中止になり、「月影花之丞大逆転」はわたしが自粛し、「狐晴信九尾狩」はメインの三人のうちとても好きな役者さんがキャスティングされたものの舞台で観るのは“無理!!!!!”なキャストが過半数を超え諦めたもんで、わたしが新感線の舞台を観るのは「けむりの軍団」以来となります。2019年7月から実に2年10カ月ぶり!。

久々のジューダス・プリーストは沁みた。曲が終わる頃には「なんなら今日はここまででいいかな」とか思ったぐらい沁みました。この時点でわたしの心のスポンジぐしょぐしょでした。

本来であれば2年前に40周年記念興行として上演されるはずだった公演で、共に新感線初参加の「月髑髏」で捨之介を演じた福士蒼汰くんと宮野真守さんがついに初共演を果たすってんで、中島かずきさんが2人に“あてがき”。しかも“バディ設定!”とくればあらゆる方向の期待をしまくりで客席についたわけですが(客席の文句は言うまい。言うまい・・・)、わたしのハートをがっつりキャッチしたのは誰であろう川原正嗣さんでした。

ここであらすじを書くと

『時は幕末、舞台は駿河の清水湊。言わずと知れた清水次郎長親分の快気祝いとして親分衆が集う料亭に身堂蛇蝎とその妻子が乗り込み名乗りを上げるが、その直後に親分衆は苦しみだし皆倒れてしまう。そこへ遅れてやってきたのが医者の秋津永流と“口出し屋”の草臥。その状況から親分衆が襲われたのは「蠍の毒」であると見抜いた永流は、間一髪で唯一命を救うことができた次郎長親分から「やったのは身堂一家」であることを聞き出す。
一方あたりの様子を確認しにいった草臥は料亭の様子を伺う男を見つけるが、その男は昔なじみとそっくりであった。驚く草臥に男は自分は身堂一家の息子・凶介だと名乗り、草臥のことなど知らぬと言う。
永流と草臥はそれぞれの「目的・思惑」のため、共に身堂一家が根城とする富士の裾野の「無頼宿」に向かう。
そこで明らかになる数々の事実。宿命と因縁。
蛇蝎と麗波による大きな企みを永流と草臥は止めることができるのか』

とまあこんな感じで、川原さんはその次郎長親分を演じているのですが、これがもーーーーーーーーーーうカッコいいのなんのって!!。




以下内容に触れてます↓↓↓




身堂には「帝を招いて無頼宿を『都』とする侠客の国を作る」という野望があって、次郎長親分を「共にヤクザの世界を作ろう」と誘うのです。次郎長親分はその話に乗る。その証として身堂一家に復讐を誓う者を裏切り斬り捨てる。でも蛇蝎と麗波が「京の都の人間を皆殺しにする」つもりであることを草臥から聞かされ、それを止めるために協力してほしいという永流の頼み(永流は次郎長親分の命を救った恩人で、その縁で親分から目を掛けられているという経緯がある)に自分はもう犬吠三男を斬ってしまった(からあとには引けない)となかなか首を縦に振ってはくれないのですが、草臥の必死の説得で自分の道を思い出してくれるのです。

で、そこで『名乗り(口上)』をキメるんだけど、これがもうめちゃめちゃカッコイイ!!!!!。
で、よっしゃお前ら無頼宿へ乗り込むぞ!と子分たちにカチコミ支度をさせつつ自分も着物の裾をたくし上げるわけですよ。これがまたカッコいい。
でね、でもね、ここでなにやら銀色のペットボトルみたいなものを子分から受け取って懐に入れてるのね。なんかスプレー缶に見えるけど、それなに?もしかして酸素吸入器(酸素缶)?と思ったんだけど、このあとすぐこの正体が明らかになるのです。

えーっと、殺虫剤でした(笑)。
驚きすぎてなんでそんな曲が始まったのかまったく記憶にないのですが(笑)、草臥と親分と子分たちがフォーメーションダンスで殺虫剤を噴射しながら歌って踊りはじめました(笑)。

殺虫剤シューシューしてるだけならそこまで驚くことじゃないんだけど(まあ新感線だしw)、なんとなんと川原さんが歌ってる!!!!!
歌だけじゃなく踊ってる!!!!!!!???????????

草臥とユニゾン(もしかしてハモってたかもしれないけどマジで覚えてない・・・)で歌うところもあるんですよ。川原さんがマモとデュエットする日がくるだなんて!!!!!
つーかこの曲めちゃめちゃオサレでカッコイイの(笑)。殺虫剤プシュープシューしてるのに(笑)。
マジでときめいた。一番テンション上がったのはこの場面でした。でもあまりのことすぎてぼんやりとしか記憶に残ってないのでこの場面のためにブルーレイ買うわ。


あらすじのなかで「そこで明らかになる数々の事実。宿命と因縁」と書きましたが、まず最初に明らかになる事実は福士くん演じる永流が狼蘭(の末裔)だってこと。
チラリと目にした舞台映像(というか福士くんのビジュアル)で「もしかして・・・」とは思ってましたが、なんだろう・・・反応に困ったw。
人を殺すことを生業にする一族、人を殺す技術(だけ)を教え込まれ育てられた者(たち)という設定は魅力的ではあるけど、舞台設定として想像が容易な「幕末の日本」に狼蘭が混ざると微妙に違和感というか、ここにも狼蘭族をぶっこんでくるんですね、かずきさん・・・的な。

一方のマモ演じる草臥にも「実は●●」設定があって、こちらは『徳川の御庭番だったけど、太平の世だから文字通り「庭掃除」しかすることがなく「暇」を理由に役目から逃げ出した』というもので、え?ダメじゃね??となったよねw。
表向きはそんな理由だけど実はなんか重いヤツ(真の理由)があるのかと思ったのにそんなものはなく、マジのガチで「それだけ」で、そのために名前忘れたけど昔なじみが闇落ちして「凶介」になったことを思うとコイツまじでダメじゃね???w。

木村了くんの凶介は草臥と同じく御庭番衆で、草臥(の本名も覚えてないや)が役目を放棄して姿を消してしまった後、そんな器じゃないのに“唯一マトモに使える男”として御庭番を背負わされ、任務として身堂一家の元にあると思しき金塊の調査のために無頼宿に向かわされ、麗波に「あやつり虫」を飲まされ「身堂一家の息子・凶介」にさせられた、という経緯があるのね。
しかも永流の知識と技術であやつり虫を駆除し“正気”に戻ったと思いきや、はじめは操られていたかもしれないけど今は“自分の意志”で身堂凶介を名乗ってるんだと、御庭番なんかより身堂一家として生きるほうがよっぽどイイと、自分より先に御庭番から逃げた草臥に自分を責める資格はないと言うわけです。超ごもっとも!!。

身堂一家の娘・揚羽もまた身堂の娘に「なった」経緯であり理由があるし、このあと書くけど蛇蝎と麗波の「夫婦」に至ってはドロッドロのグッチョングッチョンな「真実」であり「因縁」であり「愛」があるわけですよ。それらと比べて草臥の物語は随分と薄いというか軽いというか、『凶介との一騎打ち』があってもなおなんか足りなくない?と思ってしまうのだけど、それこそがこの物語における「宮野真守にあてがきされたキャラクター」の存在意義なのかなあ?。

ていうかそもそもなんだけど、永流と草臥がどういう関係から始まるのかがわからない。
料亭前で続々と集まる親分たちに愛想振りまいてる草臥は命を救ってくれた若先生として快気祝いに招かれてる永流が来ないってんで代金貰って呼びに行き、連れて戻ったら親分たちが死んでて、永流は永流の目的で草臥は草臥の目的でそれぞれ無頼宿に行く必要ができたってんで、だったら一緒に行こうよと草臥が誘うってな流れなのね。
そこでお互いの「呼び方」を決めるぐらいだし、顔見知りぐらいの間柄にしか見えず、その後も行動を共にしているってだけでとくに「コレ」といったキッカケがあるわけでもなくいつの間にか「バディ」になってるってな感じなんだよね。
求めていたのはタイプが違えば目的も違う二人がなんやかんやで濃ゆくて熱い関係性のバディになる(過程を愉しむ)物語だったんで、永流と蛇蝎、永流と麗波、の因縁であり宿命に草臥は「無関係」だったのが物足りなさに繋がった・・・かな。無関係だからこそのこのラスト、だとも思えるんだけどさ。


さて、蛇蝎と麗波。これがまあ凄かった。凄まじいヤツでした。こりゃ高嶋兄じゃなきゃ、それを受けるのが松雪さんでもなきゃ成立させられない超ハイカロリーな関係性。

ここからは絶対観てから読んでください!!!!!!!未見の人はぜったいこの先に進んじゃダメ!!!!!!!









永流が身堂一家に近づく理由はこの国にはいないはずの「蠍」を使って大量暗殺を行ったからで、そんなことができるのは自分を連れてこの国にやってきて、ある時仕事だといって自分を置いて出て行ったまま戻ってこなかった「父親」以外にありえないからなのね。つまり、身堂蛇蝎こそが自分に人を殺す技術を叩き込んだ狼蘭族の末裔である父親その人なのだと思って身堂一家を追うわけです。
で、蛇蝎もそれを「認める」んだけど、なんやかんやあって蛇蝎が「父親ではない」と永流は理解する。蛇蝎が薬や虫を使えるのは永流の父親に聞いたから(聞いたあとは殺した)というけど、聞いたぐらいじゃ狼蘭の技を使うことはできない=蛇蝎の言ってることは嘘だと。
つまり父親は生きている。お前(蛇蝎)の隣にいるのだと。


・・・えええええええええええええええええ!?松雪さん(麗波)が永流の「父親」って、えええええええええええ!??????


かつて永流父が永流を置いて向かった仕事は「帝の暗殺」で、蛇蝎は帝の警護をする役目の長で、2人は殺す者と護る者という相対する関係として出会ったのね。で、1対多勢なのでいくら狼蘭とはいえども手足を斬られ、身体に毒だか液体だかを掛けられボロボロになり劣勢に追い込まれるんだけど、自ら肌を剥がして肉剥き出しになってでも目的を達しようとするとするのです。で、そんな狼蘭の男に蛇蝎は「惚れた!」となるわけですよ。
そこはわかる。自分の身がどうなろうとも目的を果たそうとするその信念・執念をその身に浴びるんだもん、蛇蝎が「惚れる」のは理解できるの。わたしはできる。

だから蛇蝎は狼蘭の男を「女」にした。性器も斬られているからこれ幸いと「自分好みの超絶イイ女」に造り変えた。

ここがわからん(笑)。お前は永流父のどこに惚れたんだよと(笑)。
そんな事情で狼蘭族の末裔であり永流の父であった男は「身堂蛇蝎の妻・麗波」となり、「夫」に古今東西の毒全てを与えて耐性を作らせ(途中で死んだらそこまでの男)無敵とし、無頼宿を作って身堂一家を旗揚げしたと、そういう経緯があるわけです。

もうこの設定、過去話だけでカロリー摂取オーバーなのに、麗波は京を滅ぼすために造ったニュータイプ蠍の毒を摂取してしまった自分の息子と自分の夫がどうなるかを冷静に観察し、毒に耐え抗体をゲットした息子に対し毒に犯され弱っていく夫を(解毒剤の用意があるのに)そのままにして息子に銃を向けるのね。
かつての父親(の戦闘力)であれば銃なんて飛び道具を使うはずがないと、だから今のお前じゃ俺には勝てないという息子の言葉通り、斬られる麗波。
そして麗波を守ろうとしてなおも永流に剣を向けようとする蛇蝎に麗波はこういうのです。
「あんたが殺し合う相手はそいつじゃないだろう」と。
そして蛇蝎は麗波の身体に剣を突き刺し、蛇蝎に身体を貫かれながら麗波は蛇蝎の頭を銃で撃ち抜く。

ね?ドロッドロに特濃でしょう?。
これと比べちゃうとメインの2人は(キャラ的にも役者的にも)『弱い』と言わざるを得ないんだよねぇ。
でも今回は古田新太と高田聖子と橋本じゅんの三枚看板が揃って不在であることもあってか、劇団員が全編出ずっぱりで特に誰というわけではなく劇団員全員でもってW主演を支えてたのでこれはこれで、といったところですが。


久々の新感線はやっぱり楽しかったー!。これだけコッテリした作品だと「観た!!」って気になりますねw。
けっこうな長丁場で大騒ぎのお祭り舞台なのに、休演になることもなくここまで上演し続けてこれたことはほんとうにすごいことだと思います。
残すは数公演のみ。どうか最後まで走り抜けられますように。