相沢 沙呼『invert 城塚翡翠倒叙集』


前作(medium)を読んだときになんて性格の悪い小説なんだ!と衝撃を受けた記憶がまだ新しいので、城塚翡翠という性格の悪い探偵に慣れた、というか「そういうキャラだ」という理解ができているせいか前作ほどの性格悪っ!!という感じはなかったです。タイトル通り普通に倒叙ってだけ。

で、倒叙ミステリは探偵よりもむしろ犯人のキャラが重要だと私は思うのですが、この倒叙集の犯人は収録順に「奥手のプログラマー」「小学校教師」「元捜一刑事」という属性でして、2作目の「小学生教師」が最も興味深く読めました。

なぜならば性別が「女」だから。

城塚翡翠の「はわわドジっ子キャラ」は前作限定というか、相手(犯人)によってキャラを使い分けるのだと思っていたので、誰に対してもドジっ子キャラでいくんだ?女に対しても?それ通用する??と驚き思ったところで「なんだよ、はわわわって。そんな悲鳴上げる女いねーよ」と犯人に心の中で突っ込まれてて「それな(笑)」となったし。

で、その小学校教師は基本翡翠に対する印象が辛辣で、だからなのかもしれないけど翡翠も異性に対峙するときと比べると冷静・冷酷さが薄まり感情が高ぶる様子を見せるし、その理由として「同性だから」という面があるのだとしたら、翡翠をサポートする「真ちゃん」の存在がこのシリーズの鍵となるのかな?などと思いながら最後の1篇、人を殺すことをなんとも思わない犯罪界のナポレオンと呼ばれる犯罪(殺人)を知り尽くした元捜査一課の刑事を相手とする「信用ならない目撃者」に突入したわけですが、翡翠が「あわわ」って言うんですよね。
「はわわってなんだよ」というツッコミに全力同意した直後だったんで、その時点で「あれ?」と思いはしたんですよ。でも私はその違和感を読み流してしまった。

染めた髪を綺麗に巻いてふわふわヒラヒラした格好の翡翠に対し黒髪ポニテでマニッシュな格好の真ちゃんというイメージ・先入観もあったことを差し引いても(そういう意味では翡翠のファッション・言動が「戦闘服」だという発言を言葉の通り受け取っていい面もあるのだろう)、違和感を覚えはしたのにそこを追求できなかったことが悔しーーーーい!!。