西澤 保彦『沈黙の目撃者』

沈黙の目撃者 (文芸書)

沈黙の目撃者 (文芸書)


退職した刑事が他殺体で発見された現場を見た後輩刑事は違和感を覚える。その違和感とは夕食の準備中だったと思しきキッチンにエビスのロング缶とビアグラスがあることだった。完全なる下戸であるはずの先輩の遺体の側になぜビールとビアグラスが・・・?。
というのが始まりの1篇で、この作品で「沈黙の目撃者」というタイトルの意味が早々に明らかになり、以降はその「設定」で繋がる短編集です。1.2篇目までは時系列通りではないものの同じ時間軸上の物語ですが、後半の3篇は「設定」のみ共通の別作品。

刑事の視点で描かれる1篇目と事件関係者の視点で描かれる2篇目は「設定」こそ突飛・・・というかキモ恐ろしいものの、まあ普通の事件モノです。もちろんそこは西澤さんなんで、異性同性どちらに対しても性欲を持たないノンセクシャルレズビアンの刑事コンビだったりはしますが、西澤さん的にそれは普通。で、3篇目からが本番な。本領発揮な。同じ「設定」でもこうまで違いますかと、いざ「設定」を掘り下げるとなるといきなり乱交ですかと(笑)。しかもゲイが熟女をサンドイッチ乱交ですかと(笑)。続く作品も愛憎ドロドロで、「設定」のありえなさを内容のグチョさが余裕で凌駕する、それが西澤作品ですよね!(満面の笑みで)。