蒼井 碧『オーパーツ 死を招く至宝』

第16回「このミステリーがすごい!」大賞・大賞受賞作。
貧乏大学生の鳳水月は大学でオーパーツ(場違いな出土品)の鑑定士を自称する顔も骨格も瓜二つの古城深夜と出会い、様々なオーパーツの鑑定をする先々で不可解な事件に巻き込まれる・・・ってな王道パターンの連作集で、殺人を犯すにしてもよくもまぁここまでしちめんどくさいトリック(小細工)を考え実行しますね・・・ってなところまでまさに王道なのですが、世界観は独特というか特殊ではあるもののトリックはそこまで大胆とも緻密とも思わないけどなぁ・・・ってのが4篇目まで読んだところでの感想ではあったものの(この4篇目は大幅に書き直しがなされたようで、選考委員の方々が揃ってダメ出しされてる元々の4篇目がどんな作品だったのか逆に興味があります)、古城深夜に対する鳳水月であり鳳水月に対する古城深夜こそが「オーパーツ」であるというエピローグでなるほど、そこに持っていくかと感心しました。大学で替え玉をしたり、古城の代わりに鳳が犯人扱いされたり、双子だけの集まりに双子を装って参加したりと「同じ顔」であるがゆえの描写はそこここにありはするものの、それでも二人が「同じ顔」である必然性があるかというとどうかなぁ・・・と思っていたのがこのエピローグでストンと嵌った感があったので。
確実に続編が出るでしょうが(さらにシリーズ化できるかどうかはどれほどオーパーツのネタとトリックのストックがあるかによるんじゃないかな)、ひとつ引っ掛かる要素があるんだよな。それは水月と古城姉の友達以上恋人未満関係でして、姉がキャリア警察官で腕力で古城をねじ伏せられる存在である(古城の弱点である)ってのはありがちなものの良い設定だと思うけど、いくら他人だとしても自分の弟と瓜二つの男に恋愛感情を抱くってのはどうなのかなーと。今のところそれについては水月の目線でしか語られていないので友達以上恋人未満だと思ってるのは水月だけであって古城姉は変人じゃない弟ぐらいにしか思ってませんでしたってな展開になる可能性はあるけど、なんでこんな要素を入れちゃったかな?という若干の気持ち悪さが残ります。